アベノミクス相場(初期波動)

1.全体のポイント

  • 2012年11月16日の衆議院解散からの、自民党の政権復帰やデフレ脱却・次元の異なる金融政策を受けて株価は上昇に転じました。同12年11月中旬から翌13年5月下旬までの上昇波動を、テクニカルにはアベノミクス相場・初期と位置付けられると思います。
  • 各グラフにあるように、日経平均は12年11月9日の8,757.60円から13年5月22日の高値15,627.26円まで、6,869.66円(78.4%)高。途中1週間お休みを挟んでの17週連続高。ドル/円は、円安に大きく振れ、当初は、外国人投資家の買いに国内個人、金融機関が売る形でした。
  • デフレ脱却は民主党政権時も重要なテーマでしたが、新政権・日本銀行の金融政策がリフレ策に大きく転換したことが、マーケットに強力なインパクトを与えました。 


【図表】日経平均株価(週足、2011年6月~2013年12月)


2.アベノミクス、3本の矢


【第1の矢】 大胆な金融政策

  • 金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭

【第2の矢】 機動的な財政政策

  • 約10兆円規模の経済対策予算によって、政府が率先して需要を喚起

【第3の矢】 民間投資を喚起する成長戦略

  • 規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会に
(出所)内閣府ホームページより作成

 

 このレポートでは、アベノミクス初期のマーケットの動きに合わせて、第1の矢に焦点を当てています。

 2009年、リーマンショックのあと各国の景気が回復する中、日本では2012年11月までは、ドル/円で円高の動きが続くなど、世界の株価の回復に比べて、回復の遅れが目立っていました。このような状況下でのアベノミクス・第1の矢はマーケットに大きなインパクトを与えました。 

  • アベノミクス以前の民主党政権時は、円高容認論。ドル/円は2009年11月に84.82円を付けたあと2010年4月に94.70円までありましたが、2011年10月には 75.52円の高値があり、「アベノミクスの第1の矢」で反転となりました。
  • 2012年末から2013年、物価上昇率2%~3%目標(インフレターゲット政策)に対する猛烈な反論。リフレ派と反リフレ派の論争はエスカレートしました。 日本は、資産バブルの経験があるためか、どちらかと言えばインフレファイターが主流。アベノミクスでようやくリフレ派の世界標準の政策に追いついたとみるのが、一般的と言われています。反リフレ派が論じたハイパー・インフレになるとの見方は、時間を経たあと全く影を潜めました。(もっとも、2~3%の物価上昇も一時的なものとなっていますが…) 


3.金融政策と各指標の推移


 下記は、2012年10月末から13年4月初めにかけての、日銀の金融政策に関する決定事項の中から抜粋、作成しました。また当時のドル/円相場、日本10年債利回り、消費者物価指数、投資主体別売買動向を掲載しています。 


【図表】金融政策に関する決定事項等の抜粋


 上の表にある2013年4月4日の「量的・質的金融緩和」の導入についての要約は下記の通りです。

(1)「量的・質的金融緩和」の導入

 消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置きできるだけ早期に実現する。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債の平均残存期間を2倍以上に延長などを行う。=次元の異なる金融緩和

① マネタリーベース・コントロールの採用

  • マネタリーベースが年間約60~70兆円に相当するベースでの増加

② 長期国債買入れの拡大との年限長期化

  • 長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するベースでの増加

③ ETF、J-REITの買入れ拡大 

  • ETF及びJ-REITの保有残高がそれぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れする 


(2)「量的・質的金融緩和」に伴う対応

① 資産買入等の基金の廃止

② 銀行券ルールの一時適用停止

③ 市場参加者との対話の強化


(3)被災地金融機関支援資金供給の延長


【図表】ドル/円相場(2011年6月~2013年12月)


【図表】新発10年債利回り(2011年6月~2013年12月)


【図表】消費者物価指数(対前年同期比)


【図表】投資主体別株式売買動向

 ※ 金額ベース。三市場(第一部、第二部)合計。証券会社を除く委託内訳。


【図表】当時のマーケット・インディケータ

(ご参考資料)

資料1.2012年11月26日のマーケット・コメント 
資料2.2013年5月27日のマーケット・コメント 


(2020年11月2日)