自国中心の中東秩序追求=シリア空爆のイスラエル 2025年07月17日 16時15分

16日、イスラエルの攻撃を受けたダマスカスのシリア国防省(EPA時事)
16日、イスラエルの攻撃を受けたダマスカスのシリア国防省(EPA時事)

 【カイロ時事】シリア南部スワイダ県で発生した住民同士の衝突を受け、隣国イスラエルはシリア暫定政府軍の部隊などに激しい攻撃を加えた。「少数派のイスラム教ドルーズ派保護」が目的だと訴えるが、近接する南部一帯でのシリア軍部隊展開は最低限しか許さないことを鮮明にする狙いもある。6月のイラン先制攻撃に続き、あくまで自国中心の中東秩序を追求する姿勢を示した形だ。
 シリアでの衝突は13日に発生。現地からの情報によると、イスラム教スンニ派とされるベドウィン(遊牧民)がドルーズ派の野菜売りを拉致したことで報復の応酬に発展し、流血の惨事となった。
 ドルーズ派はイスラエル領内や同国が占領するゴラン高原にも居住。イスラエル領内のドルーズ派は、アラブ系市民とは異なり兵役に就くのが一般的で、パレスチナ占領に際してもアラビア語を話すドルーズ派のイスラエル兵が重要な役割を果たしている。イスラエル側にはシリアのドルーズ派に同胞意識を持つ人も多く、今回の衝突では約1000人が両国の緩衝地帯にあるフェンスを突破してシリア領内に「援護」のため侵入したとされる。
 これまでもシリアのドルーズ派が衝突に巻き込まれるたび、イスラエルはシリア領内を空爆してきた。ただ、今回は暫定政府が鎮圧のために南部に部隊を展開したため、イスラエルによる攻撃の強度が一段と増した。
 イスラエルは昨年12月にシリアでアサド政権が崩壊した後、混乱に乗じてゴラン高原の緩衝地帯に進軍した。シリア南部に「非武装地帯」をつくるとして部隊を駐留させ、現地で「刀狩り」を行うなどシリア領内でも活動を続ける。イスラエルはシャラア暫定大統領が率いる暫定政府を「イスラム過激派」と見なしており、軍事力をそいでイスラエルの付近に足場を築かせないよう躍起になっている。
 一方で、アサド政権時代にシリアで影響力を強めたイランの干渉を防ぐため、暫定政府との関係構築も模索。報道によると、12日には両国当局者がアゼルバイジャンの首都バクーで、イスラエル軍のシリア駐留について協議した。 

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