トランプ氏、尽きぬ独裁的な欲望=大統領は三権を超越か 2025年04月23日 14時56分

「大統領選を圧倒的な支持で勝利した。私は有権者が求めることをやっているだけだ」
トランプ米大統領は演説やメディアとのインタビューなどで、頻繁にこの文句を口にする。自らの政策への批判を封じ込める方便だが、米憲法の柱である三権の「抑制と均衡」をゆがめる考え方の土台にもなっている。
◇単一行政理論
トランプ氏は1月の2期目就任後、120本以上の大統領令に署名した。連邦職員の大量解雇に着手し、少数派を登用する「多様性、公平性、包括性(DEI)」政策や対外援助の見直しを加速。一方的な関税措置は内外で混乱を引き起こしている。
なぜ、こうしたことが容認されるのだろうか。
トランプ政権が独裁的な行動を正当化するために用いているのが「単一行政理論(UET)」だ。憲法2条の「執行権は米大統領に属する」を大統領に全行政を統括する権限があると解釈するもので、1980年代のレーガン政権時代から主張されるようになった。
トランプ氏は2月の大統領令で憲法2条の条文を明記した上で、議会が人事権を共有する証券取引委員会(SEC)など独立規制機関への支配を強化した。就任後の一連の大統領令に対する裁判所への異議申し立ては多数に上っている。バージニア大のプラカシュ教授(行政権)は、「トランプ氏がUETを推し進めるのは、自分と批判勢力のどちらが正しいのか、司法に判断させるためだ」とみる。
◇不服従を罰する
三権分立は本来、立法、司法、行政が自制を働かせることで成り立つ。しかし、トランプ氏は「暴力犯罪者」とされるベネズエラ人の国外追放を差し止めるよう命じた連邦判事に対し「彼は(選挙で)勝利していない。弾劾されるべきだ」とまで発言。大統領権限を乱用し、議会や裁判所の機能を損ねようとも試みている。
トランプ政権による移民攻撃は、ポピュリズム(大衆迎合)政治の源の一つでもある。不法移民に「テロリスト」などのレッテルを貼り、不法移民による犯罪の被害者家族を記者会見に招くなどしてナショナリズムもあおる。
ジョージタウン大のケイズン教授(米政治)は「ポピュリズムやナショナリズムが反民主的なのではない。トランプ氏の危険性は、不服従の者を罰する独裁的な欲望にある」と指摘する。米有力誌アトランティックは、トランプ氏を「ますます衝動的で、復讐(ふくしゅう)心に駆られ、無秩序になっている」と批判。「米国の常軌を逸した国王」とやゆしている。(ワシントン時事)。
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