衛星通信巡り大富豪が火花=世界一マスク氏とアジア首位アンバニ氏―インド 2024年10月26日 14時57分

イーロン・マスク氏(左)とムケシュ・アンバニ氏(AFP時事)
イーロン・マスク氏(左)とムケシュ・アンバニ氏(AFP時事)

 【ニューデリー時事】インドの衛星通信市場の覇権を巡り、大富豪同士が火花を散らしている。サービス開始前から競い合っているのは米実業家で世界一の億万長者イーロン・マスク氏と、地場複合企業リライアンス・インダストリーズのムケシュ・アンバニ会長。米経済誌フォーブスによると、アンバニ氏はアジア首位の資産家だ。
 約14億人が暮らすインドでは、4億人以上が依然としてインターネットを利用できないとされ、ネット環境のない村が2万5000超ある。一方、同国の衛星通信市場の規模は2030年までに年平均36%増と急拡大し、19億ドル(約2900億円)に達するとの予測もある。
 地元メディアによれば、マスク氏は21年から、自ら率いる米宇宙企業スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」のインドでの立ち上げを目指していた。同サービスは地上通信網が整備されていない地域でも、高速で遅延のないネット接続が可能となる。
 一方、マスク氏の参入を警戒してきたのが傘下に通信大手リライアンス・ジオを抱えるアンバニ氏だ。サービスに必要な周波数帯の割り当てに関し、「公平な競争」のため、オークション方式で事業者を決めるべきだと規制当局に働き掛けてきた。
 これに対しマスク氏は今月14日、オークションによる選定は「前例がない」とX(旧ツイッター)上で反発。国際的な慣行に従い、政府が事業者に配分すべきだと主張した。
 ロイター通信は、オークション方式で望む結果を得るにはより多額の投資が必要となり、外国企業は不利との専門家の見方を伝えた。アンバニ氏には、同方式なら資金力で優位に立てるとの考えがあったとみられる。
 結局、規制当局はオークションではなく政府が配分することで事業者を決めると表明。参入方式に関してはひとまずマスク氏が勝利した格好だが、今後も両氏の間では価格などを巡って激しい競争が繰り広げられそうだ。 

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