ロシア西部戦線、長期化か=越境・占領「奪還に数カ月」―24日でウクライナ侵攻2年半 2024年08月22日 14時32分
ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で2年半となる。ウクライナ軍は今月、欧米製兵器も使ってロシア西部クルスク州を越境攻撃し「1200平方キロ以上」(同軍)を占領。プーチン政権は同州で来月予定される統一地方選を一部見送った。ロシア軍が押し返すには「数カ月かかる」(政権関係者)とみられており、新たな戦線の攻防は長期化の様相を呈している。
◇米大統領選控え
ウクライナ軍が地上部隊をロシア本土に進めたのは今月6日。昨年の反転攻勢は事前に情報が漏れて失敗しており、今回の作戦は「将校は3日前、兵士は1日前」(米紙ニューヨーク・タイムズ)に知らせる徹底ぶりだった。
支援する西側当局者の間では当初、ゼレンスキー大統領の危険な「賭け」とみる向きが優勢だった。ロシア領が軍事占領されるのは、第2次大戦後初とも言われ、プーチン大統領は奪還を厳命。しかし、占領地はむしろ拡大し、結果として2週間以上持ちこたえている。
電撃作戦の背景には、和平の行方を左右する11月の米大統領選前に、先手を打つ思惑が透けて見える。返り咲きを期するトランプ前大統領はウクライナ支援に後ろ向き。トランプ氏が当選すれば「負け戦」のまま停戦を強いられる恐れがあり、交渉でロシアから譲歩を引き出せる「カード」が必要だった。
ただ、西側諸国が供与した兵器はウクライナ領内で使うのが原則。ロシア本土の攻撃に使用されれば、「国家存立の危機」と見なすプーチン政権が核兵器もちらつかせながら、西側を「交戦相手」として扱いかねない。ゼレンスキー氏はこれを理解した上で最近、侵攻を防ぐ緩衝地帯をロシア側につくるのが作戦の目的と説明した。
◇兵力不足響く
ウクライナ軍がクルスク州方面に投入したのは約1万人との報道がある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ロシア軍がウクライナ東・南部4州の占領地から急きょ転戦させたのは約5000人。本来なら2万人以上が必要とされる。ただ、占領地から精鋭部隊を引き揚げればゼレンスキー政権の「思うつぼ」。兵力不足の中で早期奪還は容易ではない。
プーチン政権は今月1日から志願兵に支給する一時金を増額しているが、兵力を補充するための応急措置とみられる。こうした中、ウクライナ軍はクルスク州の占領地を広げようと橋を次々と破壊。河川でロシア軍が越えられない自然の防御線を築いた。
選管当局は21日、クルスク州で統一地方選の一部を延期しながら、プーチン氏が指名した候補が出馬する知事選は通常通り行うと発表した。「プーチン政権は(越境攻撃が)日常だと国民にすり込もうとしている」。独立系メディア「メドゥーザ」は政権関係者への取材を基に、長期戦に慣れるよう世論対策が講じられていると伝えた。