豪、トランプ陣営に接触=原潜計画の履行働き掛け 2024年07月29日 06時29分
【シドニー時事】オーストラリア政府は、11月の米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利する場合に備え、陣営への接触を進めている。米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じた豪軍への原子力潜水艦配備計画が確実に履行されるよう、働き掛けるのが狙いだ。
バイデン現政権下で発足したAUKUSは2023年、豪州が30年代に米バージニア級原潜を3~5隻購入し、米英豪が次世代型原潜を共同開発する計画で合意した。民主党のハリス副大統領が政権を継げば波乱はないとみられるが、「米国第一」を掲げるトランプ氏が返り咲いた場合、原潜売却や共同開発への投資を渋る恐れがあると、豪側は警戒している。
マールズ豪副首相兼国防相は今月、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議出席のためワシントンを訪れた際、複数の共和党有力議員と会い、原潜計画に理解を求めた。ラッド駐米豪大使(元首相)はウィスコンシン州で開かれた共和党全国大会に足を運び、「米国民がトランプ氏を選べば、豪政府は建設的に協力していく用意がある」と訴えた。
帰国したマールズ氏は24日、海洋安保の会合で「大統領選の結果がどうなろうとも、AUKUSという資産は引き継がれる。自信を持っている」と強調。トランプ陣営との接触で手応えを得たという認識を示した。
ただ、トランプ氏の言動には「予測不可能」との評が付きまとい、同盟国でも油断はできない。豪戦略政策研究所(ASPI)のジャスティン・バッシ氏は「豪州は、AUKUSが米国の技術や産業を疲弊させるのではなく、恩恵をもたらすという利点を示す必要がある」と提言している。