ウクライナの狂犬病警戒=人道支援資金、要求の1割―国連機関 2024年07月12日 14時59分
【キーウ時事】国連食糧農業機関(FAO)は11日、ロシアの侵攻で戦闘が続くウクライナで狂犬病に感染した動物が増えているとして、人や家畜への影響に警戒感を示した。また、今年の同国での緊急人道支援活動資金が要求額の1割強にとどまっていると指摘、支援の必要性を訴えた。
FAOウクライナ事務所のピエール・ボティエール所長がインタビューで語った。狂犬病はウイルスを持つ動物にかまれることなどで感染し、発症すればほぼ100%死亡する。ウクライナ南部ミコライウ州などでは「犬や野生動物のほか、牛でも感染例が見つかっている」と話した。
世界保健機関(WHO)によると、戦闘激化で飼い主が避難し、放置された犬や猫などが予防接種を受けられず感染している。かまれれば人や家畜も感染するため、FAOは農畜産業を維持するために家畜への予防接種を支援する一方、感染状況を監視している。
地元メディアによると、北東部ハリコフ州では昨年、117件の狂犬病が発生。このうち7割近くは戦闘地域やロシア軍の占領から解放された地域で確認された。
ボティエール氏は「農家は生活基盤が農地にあり避難できない」と述べ、戦闘が継続する中でも農畜産を続けていると語った。FAOは狂犬病の拡大防止に取り組むとともに、農家に作物の種子や肥料などを提供する支援を行っている。
FAOは今年、ウクライナでの緊急人道支援活動に1億5000万ドル(約240億円)が必要としているが、現時点では1割強しか確保できていない。ボティエール氏は「(戦闘地域の)農家を見放すことはできない」と、国際社会が支援する重要性を訴えた。
一方、ロシア軍が封鎖していた黒海港湾からの農産品輸出は「ほぼ侵攻前と同じ月700万トン」を回復したという。ボティエール氏は、日本政府の支援でオデッサ州南部に設置した食品安全検査施設が輸出回復に貢献していると評価した。