羊の洋上輸出、28年に廃止=動物福祉を重視、業態転換へ補助金―豪 2024年07月02日 15時10分

中東向けに船舶で出荷される羊=2019年、オーストラリア・パース近郊の港(EPA時事)
中東向けに船舶で出荷される羊=2019年、オーストラリア・パース近郊の港(EPA時事)

 【シドニー時事】オーストラリア上院は1日、生きた羊の洋上輸出を2028年5月までに段階的に廃止する法案を可決した。下院は通過済みで、所定の手続きを経て施行される。出荷の減少や輸送中の大量死事故を受け、動物福祉を重視して廃止に踏み切った。業界は反発しているが、政府は補助金を支給して食肉加工などへの業態転換を促す方針だ。
 生きた羊は主に、豚肉を食べないイスラム教徒の多い中東や北アフリカに船舶で輸出されている。23年6月までの1年間に約65万頭が輸出され、7700万豪ドル(約83億円)の売り上げがあった。ただ、冷蔵技術の発達などで肉の輸出が主流となり、生体の出荷は過去20年間で10分の1程度に減っている。
 多数の羊を船内の荷室に詰め込むのはリスクが大きく、1996年には船火事で7万頭近くが死んだ。2000年以降も輸送中に数千頭が死ぬ事故が続発した。動物保護の観点から批判が高まり、与党・労働党は、政権を奪還した22年の総選挙で生体輸出の禁止を公約していた。
 牧羊農家や輸送業者などは収入源がなくなることを恐れ、廃止に強く反発。これに対し政府は、総額1億700万豪ドル(約110億円)を投じて羊肉の供給網強化や新規の雇用創出を支援し、理解を得たい考えだ。 

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