米大統領の免責、線引き困難=政治的な起訴に歯止めも―最高裁 2024年07月02日 07時00分

1日、ワシントンの米連邦最高裁前で、トランプ前大統領を批判するバナーを掲げる人(AFP時事)
1日、ワシントンの米連邦最高裁前で、トランプ前大統領を批判するバナーを掲げる人(AFP時事)

 【ワシントン時事】米連邦最高裁が1日、大統領在職中の「免責特権」について、対象行為の公私を区別するという指針を示したのは、将来の大統領が退任後に政治的な理由で起訴されることへの歯止めをかける意味合いがある。ただ、「公私の線引きは難しい」(最高裁)ため、トランプ前大統領が2020年大統領選を覆そうとした事件の決着は、ますます不透明になりつつある。
 ジョージ・ワシントンが1789年に初代大統領に就任してから230年以上、大統領の免責特権はどこにも明文化されてこなかった。歴代大統領がこれまで、退任後の訴追を懸念せずに困難な判断をしつつ、職務と無関係な罪を犯さないという不文律を守ろうとしてきたからだ。
 しかしトランプ氏が大統領経験者として初めて起訴されたことで、こうした超党派的な伝統は崩壊。議会における弾劾の乱用を含めて民主、共和両党の政治的な対立から生み出される「司法の武器化」は常態化しつつある。
 最高裁は判決でトランプ氏の起訴行為に関して「(公私の)分析は事実に即して行わなければならず、困難が伴う可能性がある」と指摘している。11月にはトランプ氏が返り咲きを狙う大統領選が控えており、下級審の審理が長引けば、トランプ氏の刑事裁判は一層の政治性を帯びることになる。 

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