豪市議会、同性ペア育児本を図書館で禁止=「検閲」と反発、州は撤回要求 2024年05月09日 16時00分

オーストラリア国旗(AFP時事)
オーストラリア国旗(AFP時事)

 【シドニー時事】オーストラリア東部シドニーの郊外にあるカンバーランド市議会がこのほど、同性カップルによる子育てをテーマにした本を市立図書館に置くことを禁止し、波紋を広げている。主導した市議は「伝統的な家族の価値」を守ると訴える一方、「検閲だ」と反発する声が上がっている。同市のあるニューサウスウェールズ州は差別に当たるとして撤回を求めている。
 問題とされたのは、英国で出版された「同性両親」という題名の本。家族の在り方の多様性などを説いている。市議会は先週、同書や類似の書籍を市内8カ所の図書館から撤去する措置を6対5の僅差で可決した。
 提案者のクリストウ市議は「こんな本が図書館に置かれていて困惑したという市民の苦情があった。わが地域は信仰心に厚く、家族の価値を重視している」と説明した。同性婚に強硬に反対する宗教の影響を受けているとみられる。
 これに対し、人権擁護団体「平等オーストラリア」は「借りたくない人は借りなければよく、他の人が手に取る機会まで奪ってはならない」と批判。他の団体や住民からも「時代錯誤」「言論の自由を脅かす」といった反対意見が出ている。
 州のグラム芸術相は「文明社会が書物を焼いたり禁じたりするのは悪い兆候だ。読者の判断に委ねるべきで、市議会が検閲してはならない」と指摘。差別禁止の州法に抵触するとして撤回を求める方針で、同市への図書館関連予算の拠出停止も辞さない構えだ。 

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