戦勝記念日の政治利用に批判=「ロシアこそナチス」とウクライナ 2024年05月09日 15時20分

戦死したウクライナ兵士の葬儀に集まった遺族ら=7日、キーウ(EPA時事)
戦死したウクライナ兵士の葬儀に集まった遺族ら=7日、キーウ(EPA時事)

 第2次大戦で旧ソ連がナチス・ドイツに勝利した9日の記念日を、ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻に重ね合わせて利用してきた。旧ソ連圏の人々にとって「戦禍を繰り返さない」と誓いを新たにする日だが、現代の戦争で愛国的なプロパガンダに利用されていると批判する声は大きい。
 プーチン氏はウクライナの現体制を「ナチス」と決め付け、同国の「非ナチ化」を侵攻の口実にしている。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦没者を追悼する日にも侵略の手を緩めないロシアこそが「ナチス」と断じ、プーチン氏の主張はまやかしだと改めて訴えた。
 ウクライナ各地では8日、ミサイル50発以上、自爆ドローン20機以上が撃ち込まれる空爆があり、ゼレンスキー氏は「ナチスのプーチンが大規模な攻撃を行った」と糾弾した。
 ウクライナもかつて5月9日を戦勝記念日として祝ってきたが、2014年に南部クリミア半島をロシアに一方的に「併合」されたことに反発し、翌15年に5月8日に変更した。
 当のロシアでも「違和感」を抱く人々は少なくない。弾圧から国外に拠点を移した独立系放送局「ドシチ(雨)」は、記念日前に特別番組を放送。政権を批判する記者らは「大祖国戦争(独ソ戦)の歴史でウクライナ侵攻の正当化を試みている」「プーチン氏は22年に首都キーウ(キエフ)を制圧し、そこで戦勝パレードを実施したかったはずだ」と指摘した。
 欧米首脳もモスクワの「赤の広場」に一堂に会した05年の60年記念行事とは様変わりし、近年出席してきた外国首脳は旧ソ連圏の親ロシア国が中心。今年は関係が冷え込むアルメニアなどが事実上ボイコットし、プーチン氏の孤立を浮き彫りにした。 

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