国章の鳥エミューを救え=都市化で減少、絶滅危惧種も―豪 2024年04月28日 14時17分

オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州の私営野生動物保護園で飼育されるエミュー=3月17日
オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州の私営野生動物保護園で飼育されるエミュー=3月17日

 【シドニー時事】オーストラリアに古来生息し、国章に描かれている鳥エミューが危機的な状況にある。都市化が進んだ東海岸地域では個体数が減少し、特定種の絶滅も危惧されている。
 エミューは体長1.5~2メートルの飛べない鳥。国際自然保護連合(IUCN)によると、野生では豪州に70万羽前後いるとされる。だが、東部ニューサウスウェールズ州では宅地開発や山火事の多発によって生息域が狭まり、沿岸エミューと呼ばれる固有種は50羽以下に激減した。
 州当局は「何も手を打たなければ50年後にはいなくなる」と懸念。自動車との衝突事故や天敵のイヌに卵やひなが襲われるケースも多く、当局は人工繁殖で成鳥に育て、野生に返す取り組みを進めている。
 民間の保護活動もある。動物看護師のベリンダ・ドノバンさんは2014年、同州南部フォールズクリークで私営の野生動物保護園を立ち上げ、事故などで行き場を失ったエミューを常時30羽以上育てている。エミューの油脂を売っていた農場主が廃業で殺処分しようとしたのを制止し、自ら引き取ったことがきっかけという。
 同園ではエミューのほか、カンガルーやウォンバットなども救護。家族とボランティアで世話をし、えさの野菜や果物は商店から寄付を受けている。ドノバンさんは「私財だけではあと10~20年が限界。活動を永続させるには一層の支援が必要だ」と行政や経済界の協力を求めている。
 一方、離島のタスマニア州では、入植した英国人による乱獲で19世紀半ばにエミューが絶滅。その後、森林の生態系が変わって衰退した植物もある。タスマニア大学の研究チームは、エミューの排せつ物が天然の堆肥として森の再生に寄与するとみており、再び島に生息させる構想を描いている。 

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