新興国、「ドル離れ」模索=人民元なお力不足 2024年02月24日 14時57分

 【ワシントン時事】ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、新興国の間で「ドル離れ」を模索する動きが出ている。米国は制裁を通じ、基軸通貨ドルを中心とする国際金融システムからロシアを排除。ドルの「武器化」への警戒が高まった。しかし、中国の人民元は国際通貨としてまだ力不足で、ドルを頂点とする「ヒエラルキー」は当面揺るぎそうにない。
 「新興5カ国(BRICS)首脳は自国通貨や決済手段などの問題の検討を財務相・中央銀行総裁に課すことで合意した」。南アフリカのラマポーザ大統領は昨年8月、同国で開催された中国やロシアなどが参加したBRICS首脳会議後の記者会見で、新たな金融秩序構築に意欲を示した。
 米欧はウクライナ侵攻を受け、ドルや、第2の準備通貨ユーロの決済網からロシアを排除。米国と対立する中国など有力新興国に「ドル依存」への警戒心を抱かせている。
 こうした中、中国は人民元の流動性を供給する通貨スワップ協定の締結を40カ国・地域に拡大し、着々と元の国際化への布石を打つ。経済危機に見舞われ、ドル不足に陥ったアルゼンチンは昨年、協定を通じて供給された元を、国際通貨基金(IMF)融資の返済などに充てた。中国と途上国の貿易決済でも、元が使われるケースが徐々に増えている。
 一方、世界の外貨準備で人民元の割合は2%台と、豪ドルやカナダ・ドルと同程度で、60%弱のドルに及ばない。英シンクタンク「OMFIF」の2023年の中央銀行当局者調査では、外貨準備の多様化で人民元は有力な受け皿の一つだが、10年後の割合は6%にとどまると予想された。
 当局者の回答の75%は「透明性(欠如)が中国への投資で最大の阻害要因」に挙げた。米国の経済競争力や市場の開放性がドルを支えており、アデエモ米財務副長官は23日の講演で「米国への投資が続く限り、ドルの金融システムは支配的であり続ける」と強調した。 

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