内向き米国、ウクライナ支援途絶=大統領選前にトランプ氏の影―侵攻2年 2024年02月23日 14時20分

ウクライナのゼレンスキー大統領(左)とバイデン米大統領=2023年12月、ホワイトハウス(AFP時事)
ウクライナのゼレンスキー大統領(左)とバイデン米大統領=2023年12月、ホワイトハウス(AFP時事)

 【ワシントン時事】ロシアのウクライナ侵攻から2年を迎え、ウクライナの最大の後ろ盾だった米国では、大統領選を控えて内向き志向が強まっている。議会では下院で過半数を握る共和党の反発で、約600億ドル(約9兆円)の対ウクライナ支援を盛り込んだ法案が可決されるめどは立たないまま。米政府の資金は昨年末で底を突き、支援は途絶えた。
 昨年2月20日、バイデン大統領はウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問。ウクライナのゼレンスキー大統領と共に空襲警報が鳴り響く中で市内を歩き、支援継続を誓った。
 それからちょうど1年後の今月20日。バイデン氏の姿は米西部カリフォルニア州にあった。選挙集会での約15分間の演説で、ウクライナに言及したのは一度だけ。トランプ前大統領が支援法案の成立を妨害していると非難した場面だった。
 共和党の候補指名争いを独走するトランプ氏は、同党議員に支援法案に反対するよう圧力をかけている。これを受け、ジョンソン下院議長は「外国に支援を送る前に、米国の国境を強化するのが先だ」として、対メキシコ国境を越えて流入する移民対策を優先するよう主張し、法案採決を拒否している。
 国民にも厭戦(えんせん)気分が広がりつつある。昨年12月に公表された世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査によると、米政府のウクライナ支援を「やり過ぎだ」と回答した米国民は全体の31%で、「不十分だ」は18%、「適切だ」は29%だった。
 特に共和党支持者では、やり過ぎだという答えが48%に上った。また、ピューの今年2月公表の世論調査で、対メキシコ国境の移民問題が「危機的だ」「大きな問題だ」と回答した割合は合計で約8割に達した。
 米シンクタンク「外交問題評議会(CFR)」のスティーブン・セスタノビッチ上級研究員は「1年前には存在しなかった国内論争が今はあり、米国の(対ウクライナ)政策を根本的なところで妨げている」と指摘する。トランプ氏はロシアのプーチン大統領に好意的な発言を繰り返し、「私が大統領なら、24時間で戦争を終わらせる」と豪語している。今年11月の大統領選でトランプ氏が勝利すれば、ウクライナに対する姿勢はさらに大きく転換される可能性が高い。 

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