ウクライナを「兵器の実験場」に=北朝鮮、ロシアと軍事協力強化 2024年02月22日 17時38分

握手を交わす北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(左)とロシアのプーチン大統領=2023年9月、同国極東ボストーチヌイ(AFP時事)
握手を交わす北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(左)とロシアのプーチン大統領=2023年9月、同国極東ボストーチヌイ(AFP時事)

 【ソウル時事】間もなく開始から2年を迎えるロシアのウクライナ侵攻で、北朝鮮はロシアに短距離弾道ミサイルや大量の砲弾を提供し、ウクライナを「兵器の実験場」としているもようだ。英国の紛争兵器研究所(CAR)は、ロシア軍が1月、北朝鮮の短距離弾道ミサイル「KN23」か「KN24」をウクライナ北東部ハリコフの攻撃に使ったと推定。ミサイルの残骸を分析した結果、部品の特徴が酷似し、ハングルの表記も見つかった。
 ロイター通信によると、ウクライナ当局も、ロシア軍が昨年末から今月7日までに、KN23やKN24系列の北朝鮮製ミサイルを少なくとも24発発射したと発表している。民間人14人が死亡し、70人以上が負傷した。比較的正確に目標へ命中したのは2発だけという。
 KN23やKN24は、北朝鮮が2019年から日本海への発射実験を繰り返してきた。迅速な発射が可能な固体燃料式で、低い高度を変則的な軌道で飛ぶ特徴がある。日米韓3カ国や米韓両国のミサイル防衛の突破を狙って開発された。
 実戦での検証はミサイルの性能向上につながる可能性がある。韓国政府系シンクタンク統一研究院の洪※(※王ヘンに民)先任研究委員は「北朝鮮の実益はとても大きい。ウクライナを兵器の重要な実験場として、その結果を活用できる」と指摘する。
 武器供与と引き換えのロシアからの軍事技術支援も「大きな実益」だ。北朝鮮が昨年、軍事偵察衛星の打ち上げに成功した陰にもロシアの支援があったとされる。北朝鮮の海軍や空軍は装備の老朽化が進み、韓国に劣る。洪氏は北朝鮮が軍の現代化への支援を期待しているとみる。
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は昨年9月にロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した。韓国政府の分析では、これと前後して、北朝鮮はロシアに100万発超の砲弾も提供した。侵攻の長期化で不足した砲弾の支援を受け、ロシア軍は攻勢を強め、ウクライナ軍を物量で圧倒している。
 洪氏は「ウクライナ侵攻を巡り米国と対決するロ朝の戦線が形成された。ロシアとの連携が強化され、対中関係もあつれきは見えず、北朝鮮は外交面で好機を迎えている」と分析。プーチン氏は3月のロシア大統領選以降の訪朝を検討しているとされ、ロ朝の軍事協力がどこまで深まるかを西側諸国は懸念を持ち注視する。 

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ミサイルの残骸を調べるウクライナの検察当局者=1月6日、北東部ハリコフ(AFP時事)
ミサイルの残骸を調べるウクライナの検察当局者=1月6日、北東部ハリコフ(AFP時事)

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