金融緩和を継続=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2024年11月08日 09時52分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は11月7日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「米国経済は堅調に推移、インフレは2%の目標に向け前進、労働市場は堅調さを維持している」と述べ、0.25%の利下げの根拠としました。金融政策について12月以降の見通しには触れず、「当委員会は、入手するデータ、変化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価します。私たちはあらかじめ決められた道筋を歩んでいるわけではありません。今後も会合を重ねながら決定を行っていきます」と、いつもの発言を繰り返すに留まりました。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2024年11月7日

 私たちは、アメリカ国民の利益のために「最大雇用」と安定した物価という2つの目標を達成することに引き続き全力を傾けています。経済は全体として堅調であり、過去2年間で目標に向けて著しい進展を遂げました。労働市場は以前の過熱状態から落ち着き、堅調さを維持しています。インフレ率はピーク時の7%から9月には2.1%へと大幅に低下しました。私たちは、「最大雇用」を支援し、インフレ率を2%の目標に戻すことで経済の堅調さを維持していく所存です。

 本日、FOMCは政策金利を0.25%引き下げることで、金融引締め政策の抑制度をさらに緩和することを決定しました。政策スタンスを適切に調整することで、経済と労働市場の強さを維持し、インフレ率を2%に向けて持続的に低下させることができると、確信しています。また、保有証券の削減を継続することも決定しました。

 最近の経済指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示しています。第3四半期のGDPは前期比年率2.8%増加し、第2四半期とほぼ同様のペースでした。個人消費の伸びは回復力に富んでおり、設備や無形資産への投資は堅調に推移しています。一方、住宅部門の活動は低迷しています。全般的に供給条件の改善が、過去1年間の米国経済の好調なパフォーマンスを下支えしてきました。

 労働市場の状況は依然として堅調です。給与所得者の増加ペースは年初から鈍化しており、過去3カ月間の増加数は月平均10万4000人でした。10月のストライキやハリケーンの影響がなければ、この数字はもう少し高かったでしょう。ハリケーンについてですが、この壊滅的な嵐により被害を受けたすべての家庭、企業、地域社会に対し、心よりお見舞い申し上げます。失業率は1年前と比べて著しく高いですが、過去3カ月間は低下傾向にあり、10月は4.1%と依然として低い水準を維持しています。名目賃金の伸びは過去1年間で鈍化し、雇用と労働力のギャップは縮小しています。全体として、幅広い経済指標が示すところによれば、労働市場の状況は20192年のパンデミック直前の状況よりも緩和していることが分かります。労働市場は、大幅なインフレ圧力要因ではありません。

 過去2年間でインフレは大幅に緩和しました。9月までの12カ月間では、個人消費支出(PCE)物価指数は2.1%上昇しました。変動の大きい食料品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は2.7%上昇しました。全体として、インフレはFRBの長期的な目標である2%にかなり近づいていますが、コアインフレ率は依然としてやや高止まりしています。長期的なインフレ期待は、家計、企業、エコノミストを対象とした幅広い調査や金融市場の指標に反映されているように、依然として十分に抑制されているようです。

 FRBの金融政策は、米国国民のために「最大雇用」と安定した物価を促進するという2つの責務に基づいて決定されます。FRBは、雇用とインフレの目標達成に向けたリスクは概ね均衡していると考えており、2つの責務におけるリスクに注意を払っています。本日の会合において、当委員会はフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を0.25%引き下げ4.50%から4.754にすることを決定しました。 政策スタンスのさらなる調整は、経済および労働市場の強さを維持し、インフレ率のさらなる改善を可能にします。

 金融引締め政策を急激に緩和しすぎると、インフレの抑制を妨げる可能性があることは承知しています。同時に、金融緩和のペースが遅すぎると、経済活動や雇用が過度に弱まる可能性があります。FF金利の目標レンジの追加調整を検討するにあたり、当委員会は、入手するデータ、変化する見通し、リスクのバランスを慎重に評価します。私たちはあらかじめ決められた道筋を歩んでいるわけではありません。今後も会合を重ねながら決定を行っていきます。

 経済が発展するにつれ、金融政策は「最大雇用」と物価安定という目標を最大限に促進するように調整されます。経済が堅調を維持し、インフレ率が持続的に2%に向かっていない場合、金融引締め政策を緩やかに戻すことができます。労働市場が予想外に弱まるか、インフレ率が予想以上に急速に低下した場合、より迅速に対応することができます。私たちの政策ポジションは、私たちが直面するリスクと不確実性に対処する上で、適切な位置にあります。

 FRBには金融政策に関して2つの目標が課せられています。すなわち、「最大雇用」と物価の安定です。FRBは引き続き「最大雇用」を支援し、持続可能な方法でインフレ率を2%の目標に近づけ、長期的なインフレ期待を適切に維持することに全力を尽くします。これらの目標を達成することに成功することは、すべてのアメリカ国民にとって重要です。私たちの行動が、全国の地域社会、家庭、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公共の使命に奉仕するものです。FRBは、「最大雇用」と物価安定という目標を達成するために全力を尽くします。

[日本語訳 ゴールデンチャート社]

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