引締め政策は依然道半ば=パウエル議長記者会見スピーチ 2022年12月15日 10時56分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は12月14日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「インフレ上昇ペースは足元、減少しているが、インフレ率が持続的な低下傾向となっていることを確信するまでにはなお多くのエビデンスが必要」と慎重な姿勢を示し、今後も継続して利上げいく意向を表明しました。今回の0.5%の利上げについて「金融抑制の効果が全面的に現れるには、特にインフレ率については時間がかかると思われる。金融引き締めの累積と、金融政策が経済活動やインフレに与える影響の遅れを考慮して、当委員会は本日の利上げを50bpとし、過去4回の75bpのペースから一歩後退させることを決定した」との見解を示しました。FOMCが提示した経済見通しでは、2023年末にはフェデラルファンド金利の予測中央値が、5.1%と9月時点の予測値より0.5%高く、2023年前半にかけ利上げが行われる可能性を示唆しています。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2022年12月15日

  • 今年1年、私たちは金融引締めのスタンスをとるためい力強い行動をとってきた。これまでの急速な引き締めの効果が十分に発揮されるのはこれからであり、なお私たちにはまだやるべきことがある。物価の安定は、連邦準備制度の責務であり、米国経済の基盤でもある。物価の安定なければ、経済は誰のためにも機能しない。
  • 本日、FOMCは政策金利(フェデラルファンド金利)を0.5%引き上げた。私たちは、インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策を達成するために、継続的な引き上げが適切であると考えている。さらに、バランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスを続けている。物価の安定を回復するためには今後しばらくの間、金融引締め政策を維持することが必要であろう。
  • 米国経済は、昨年の急速な上昇ペースから大きく減速している。前四半期の実質GDPは2.9%のペースで増加したが、第1〜3四半期期ではほぼ横ばいで推移している。最近の経済指標では、今期は支出と生産の伸びが緩やかであることが指摘されている。個人消費は、実質可処分所得が減少し、金融引き締めを反映して昨年の急激な伸びから減速している。住宅部門は、主に住宅ローン金利の上昇を反映して著しく弱くなっている。また、金利の上昇と生産高の伸びの鈍化が企業の設備投資を圧迫しているようにみられる。FOMCの経済見通しの概要が示しているように、今年と来年の実質GDP成長率の予測の中央値はわずか0.5%で、長期的な成長率の予測の中央値を大きく下回っています。
  • 経済成長の鈍化にもかかわらず、労働市場は極めてタイトであり、失業率は50年ぶりの低水準に、求人倍率は依然として非常に高く、賃金上昇率も高い。雇用の増加は堅調で、過去3カ月間の雇用者数は月平均27万2,000人増加した。求人倍率は過去最高を下回り、雇用増加のペースは年初より鈍化しているが、労働市場は依然としてバランスが崩れており、労働力需要が供給を大幅に上回っている。労働力率は年初からほとんど変化していない。FOMC参加者は、労働市場の需給状況が時間の経過とともに均衡状態に戻り、賃金と物価の上昇圧力が緩和されると予想している。
  • インフレ率は、長期的な目標である2%を大幅に上回って推移している。10月までのPCE物価指数は年率6%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数価格は5%上昇した。11月の消費者物価指数(CPI)は年率7.1%で上昇、コアCPIは年率6%の上昇だった。10月と11月のインフレ率データでは、月間ベースの物価上昇ペースが減少していることを歓迎している。しかし、インフレが持続的な低下傾向にあるという確信を得るには、なお多くのエビデンスが必要であろう。
  • 幅広い商品とサービスにおいて、価格上昇圧力は引き続き顕著である。ロシアの対ウクライナ戦争は、エネルギーと食料の価格を押し上げ、インフレの上昇圧力に寄与している。FOMCの経済見通しではPCEインフレ率の中央値は今年5.6%、来年3.1%、2014年2.5%、2025年2.1%と低下しており、参加メンバーは依然としてインフレに対するリスクが上方に偏っていると見ている。私たちは、高いインフレが購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通といった必需品のコスト上昇に対応できない人々にとって大きな苦難をもたらすことを痛感している。
  • インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であると考えている。この1年間で金融環境は、FRBの金融政策に呼応して大幅に引締めが実現した。インフレ率を2%に戻すために行っている引締め政策を、長期的に反映させることが重要だ。住宅など米国経済の中で最も金利の影響を受けやすい分野の需要に効果が表れているが、金融抑制の効果が全面的に現れるには、特にインフレ率については時間がかかると思われる。金融引き締めの累積と、金融政策が経済活動やインフレに与える影響の遅れを考慮して、当委員会は本日の利上げを50bpとし、過去4回の75bpのペースから一歩後退させることを決定した。もちろん50bpは依然として歴史的な大幅利上げであり、まだ道半ばでもある。FOMCの経済見通しで示すように、来年末のフェデラルファンド金利の適切な水準に関する予測の中央値は5.1%で、9月の予測より0.5%高く、2024年末に4.1%、2025年末に3.1%であり、長期的な値の中央値を依然として上回っている。
  • 私たちは、需要と供給が一致するよう、需要を緩和するための強力な手段を講じている。私たちの包括的な焦点は、私たちの手段(金融政策)を用いてインフレ率を2%の目標に戻し、長期的なインフレ期待のレベルに十分に安定させることである。インフレ率の低下には、トレンドを下回る成長率の持続と労働市場の軟化が伴う可能性がある。物価の安定を取り戻すことは、長期的な視野に立った「最大雇用」と安定した物価の実現のための布石として欠かせない。歴史は、早まった政策緩和を強く戒めている。私たちはは、仕事が完了するまで、その方針を維持する。

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■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)