引き続き金融引締めスタンスを堅持する=パウエル議長記者会見スピーチ 2022年11月03日 10時12分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は11月2日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、米国経済の成長率が鈍化していることを認識したうえで、インフレ抑制と物価の安定を最優先とするこれまでの金融政策スタンスを堅持すると述べました。利上げによる効果が表れるにはなお時間がかり、足元の経済データは、今後の金利水準が以前予想よりも高くなる可能性を示唆しているとし、「歴史は早まった金融緩和策を強く戒めている。仕事が完了するまでこの金融政策を維持する」と強い決意を示しています。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2022年11月3日

  •  物価の安定なくして、経済は誰のためにも機能しない。物価の安定がなければ、全ての人に恩恵をもたらす強い労働市場を持続することはできない。本日、FOMCは政策金利の75bp引き上げを決定。今後も継続的な引き上げが適切であると想定している。私たちは、インフレ率を2%に戻すために必要な引締め政策に移行している。さらに、バランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスを続けている。物価の安定を回復するには、しばらくの間、引締め政策を維持する必要があると考えられる。
  • 米国経済は、昨年の急速な成長ペースから大きく減速している。実質GDPは前年期に2.6%のペースで増加したが、今年に入ってからは横ばいとなっている。最近の指標では、今期は支出や生産の伸びが緩やかであることが指摘されている。個人消費は実質可処分所得の減少、金融引き締めを反映して昨年の急激な伸びから減速しています。住宅部門は、主に住宅ローン金利の上昇を反映して著しく弱くなっている。金利の上昇による生産高の伸びの鈍化は、企業の設備投資にも重くのしかかっているとみられる。
  • 経済成長率の鈍化にもかかわらず、労働市場は極めてタイトであり、失業率は50年ぶりの低水準、求人倍率は依然非常に高く、賃金の伸びは高い水準にある。新規就業者数の増加は堅調で、8月と9月は月平均28万9000人増加した。求人倍率は過去最高を下回り、雇用増加のペースは年初より鈍化しているが、労働市場は依然としてバランスが崩れており、需要が供給を大幅に上回っている。
  • インフレ率は、長期的な目標である2%を大幅に上回っている。9月までの12カ月間で、PCE物価指数は6.2%上昇、コアPCE物価指数は5.1%上昇した。そして、最近のインフレデータは再び予想を上回る結果となった。幅広い商品とサービスにおいて、物価上昇圧力は依然として顕著となっている。ロシアの対ウクライナ戦争は、エネルギーと食料の価格を押し上げ、インフレに対するさらなる上昇圧力となっている。
  • 本日の会合で、当委員会はフェデラルファンド金利の目標レンジを 75bp引き上げる決定。さらに金融政策のスタンスを固める上で重要な役割を果たすバランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスを継続している。本日の決定で今年中に3.75%引き上げを実施したことになる。私たちは、インフレ率を長期的に2%の水準にまで戻すために、フェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げていくことが適切であると想定している。
  • 私たちの金融政策を受けて金融環境が大幅に引き締まり、住宅など最も金利の影響を受けやすい経済セクターの需要に影響が現れている。しかし、金融抑制の効果が完全に発揮されるには時間がかかり、特にインフレ率に効果がでるまでには時間がかかることになるでしょう。過去2回の記者会見で述べたように、ある時点で引き上げペースを落とすことが適切となるでしょう。しかしながら、まだ道半ばであり、前回の会合以降に入手した経済データは、最終的な金利水準が以前の予想よりも高くなる可能性を示唆している。
  • インフレ率を低下されるためには、トレンドを下回る成長率が続くことや労働市場の軟化が必要となるかもしれない。歴史は、早まった政策緩和を強く戒めている。私たちは、仕事が完了するまで私たちの金融政策スタンスを堅持する。

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■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)