利下げ見通し、年内2回を堅持=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2025年06月19日 09時31分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は、6月18日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、トランプ政権が課す関税の影響について、「関税の影響はその最終的な水準を含む複数の要因に依存します。その水準に関する期待、および関連する経済的影響は4月にピークに達し、以降低下しています。それでも、今年中の関税引き上げは物価上昇を促し、経済活動に圧力をかける可能性があります」と述べ、今後の金融政策に関して「現時点では、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の今後の動向についてさらに情報を収集する余裕があります」と、依然として慎重な姿勢を維持しています。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2025年月6月19日

 私たちは、米国国民のために「最大雇用」と「物価の安定」という 2 つの使命の達成に引き続き全力を尽くしてまいります。不確実性は依然として高いものの、経済は堅調な状況にあります。失業率は低水準で推移しており、労働市場は「最大雇用」またはそれに近い状況にあります。インフレ率は大幅に低下していますが、当委員会の 2% の長期目標を若干上回っています。当委員会の目標を支援するため、本日、連邦公開市場委員会は政策金利を据え置くことを決定しました。

 現在の金融政策スタンスは、経済情勢の潜在的な変化にタイムリーに対応できる良好な立場にあると当委員会は考えています。昨年2.5%の成長率を記録した後、第1四半期のGDPは、関税政策導入を前に企業が輸入を前倒ししたことでネット輸出が変動したため、小幅に低下しました。この異常な変動はGDPの測定を複雑化させています。ネット輸出、在庫投資、政府支出を除いた民間国内最終消費(PDFP)は、堅調な2.5%の成長率を維持しました。PDFP内では、個人消費の伸びが鈍化した一方、設備投資と無形資産投資は第4四半期の弱さから回復しました。しかし、家計と企業の調査では、最近の数カ月間で景気動向に対するセンチメントが低下し、経済見通しに対する不確実性が高まっていることが示されています。これは主に貿易政策に関する懸念を反映しています。これらの動向が今後の支出と投資にどのように影響するかは、今のところ不明です。経済予測の概要では、参加メンバーの中央値は、今年の GDP 成長率を1.4 %、来年の成長率を1.6%と、3 月の予測よりやや下方修正しています。

 労働市場では、堅調な状況が続いています。過去 3カ月月間の雇用者数は、月平均 13 万5000人増加しました。失業率は4.2%と低水準で、この 1 年は狭い範囲で推移しています。賃金の上昇は引き続き緩やかなペースで、依然としてインフレ率を上回っています。全体として、幅広い経済指標は、労働市場の状況は概ね均衡しており「最大雇用」と整合的であることを示しています。労働市場は、著しいインフレ圧力の要因にはなっていません。SEP(FOMC経済見通し)の失業率予測の中央値は、今年末および来年末ともに4.5% で、3 月の予測より若干上昇しています。インフレ率は 2022 年半ばの最高値から大幅に低下していますが、2% の長期目標に比べやや高い水準で推移しています。消費者物価指数およびその他のデータに基づく推計によると、5 月までの12カ月間の個人消費支出(PCE)総合物価指数は 2.3%上昇し、変動の激しい食品およびエネルギーを除くコア PCE 物価は 2.6%上昇しました。短期的なインフレ期待の指標は、市場ベースと調査ベースの両方の指標で最近数カ月間で上昇しています。消費者、企業、専門家への調査では、関税が主な要因として指摘されています。ただし、来年以降については、長期的な期待のほとんどの指標は、当理事会の2%のインフレ目標と一致しています。SEP における今年の PCE インフレ率の見通しの中央値は 3%と、3 月の予測よりやや上昇しています。インフレ率の見通しの中央値は、2026年には2.4%、2027年には2.1%に低下しています。

 私たちの金融政策は、米国国民のために「最大雇用」と「物価の安定」という 2 つの使命に基づいて実施されています。本日の会合において、当委員会は、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを 4.25~4.50%に維持し、バランスシートの縮小を継続することを決定しました。当委員会は、入手する情報、見通しの推移、リスクのバランスを踏まえ、引き続き金融政策の適切なスタンスを決定していきます。貿易、移民、財政、規制に関する政策の変更は引き続き進展しており、それに伴う経済への影響は依然として不確実です。関税の影響は、その最終的な水準を含む複数の要因に依存します。その水準に関する期待、および関連する経済的影響は4月にピークに達し、以降低下しています。それでも、今年中の関税引き上げは物価上昇を促し、経済活動に圧力をかける可能性があります。インフレへの影響は一時的なものとなる可能性があり、価格水準の一時的な変化を反映するものです。一方で、インフレ圧力がより持続的なものとなる可能性もあります。そのような結果を回避するためには、関税の影響の大きさ、その影響が価格に完全に反映されるまでの期間、そして最終的には長期的なインフレ期待を適切に安定させることに依存します。

 私たちの義務は、長期のインフレ期待をしっかりと固定し、一時的な物価水準の上昇が継続的なインフレ問題にならないようにすることです。この義務を果たすため、私たちは「最大雇用」と「物価安定」という 2 つの使命のバランスを取りながら、物価安定がなければ、すべての米国国民に恩恵をもたらす長期にわたる堅調な労働市場を実現することはできないことを念頭に置いて行動していきます。私たちは、二重の使命の目標が緊張状態にあるという困難なシナリオに直面する可能性があります。そのような状況が発生した場合、私たちは、経済が各目標からどの程度離れているか、およびそれらのギャップが埋まる見込みの潜在的に異なる時間軸を考慮します。現時点では、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の今後の動向についてさらに情報を収集する余裕があります。

 FOMC の参加メンバーは、SEP において各自が最も可能性が高いと判断する今後のシナリオに基づき、FF金利の適切な道筋について個々の見通しを提示しました。参加メンバーの予測の中央値は、今年末のFF金利の適切な水準は3.3% と、3月の予測と同じです。来年末時点では3.6%、2027年末には 3.4% と予測されています。これは 3 月の予測を若干上回っています。これらの個々の予測は常に不確実性に左右されます。そしてもちろん、これらの予測は当委員会の計画や決定ではありません。

 今回の会合では、金融政策の枠組みの 5 年間のレビューの一環として、議論を継続しました。金融政策に関連するリスクと不確実性の評価および、政策戦略とコミュニケーションに与える潜在的な影響に関する問題に焦点を当てました。当レビューには、全国で開催されたイベント「Fed Listens」や先月開催した研究会議など、幅広い関係者によるアウトリーチや公開イベントも含まれています。私たちは、新しいアイデアや批判的な意見にも耳を傾け、過去 5 年間の教訓を反映して結論を導き出していきます。長期目標と金融政策戦略に関する声明の修正は、夏の終わりまでにまとめたいと考えています。その後、SEP を含む一連のコミュニケーションツールの改善を検討していきます。FRB には、金融政策の 2 つの目標、すなわち「最大雇用」と「物価の安定」が課されています。私たちは、最大雇用、2%のインフレ率目標の持続的な達成、および長期のインフレ期待の安定維持を引き続き支援していきます。これらの目標の達成は、すべての米国国民にとって重要なことです。私たちの行動は、全国のコミュニティ、家族、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公共の使命のためにあります。

[ゴールデンチャート社]

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■関連情報(外部サイト)
FOMC記者会見議事録(FRB原文)