来年以降、強気のインフレ予想=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2024年12月19日 10時10分
連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は12月18日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、FOMC参加メンバーが今回提示した「経済予測の概要」を引用し、「参加メンバーの中央値は、FF金利の適正水準は来年末には3.9%、2026年末には3.4%になると予測しています。これらの中央値予測は、9月時点よりもやや高く、より強気のインフレ予測と一致しています」と述べ、来年以降、FF金利は以前の予想より高めに推移し、インフレも高止まりとなると予想しています。
金融政策については慎重なスタンスを示し、「私たちは、経済と労働市場の強さを維持しながらインフレのさらなる改善を可能にするため、政策をより中立的な設定へと移行させてきました。本日の措置により、政策金利はピーク時から1%ポイント引き下げられ、政策スタンスは金融引締め状態から大幅に緩和されました。したがって、政策金利のさらなる調整を検討する際には、より慎重な姿勢で臨むことができます」と述べています。
パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ
[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2024年12月19日
私たちは、米国民の利益のために「最大雇用」と安定した物価という二つの責務としての目標を達成することに引き続き真正面から取り組んでいます。経済は全体的に堅調であり、過去2年間で目標に向けて著しい進展を遂げました。労働市場は以前の過熱状態から冷え込み、依然として堅調です。インフレ率は、私たちの2パーセントという長期的目標にかなり近づいています。私たちは「最大雇用」を支援し、インフレ率を2%の目標に戻すことで、経済の強さを維持することに全力を尽くしています。この目的を達成するために、本日、FOMCは政策金利を0.25%引き下げることで、金融引締め政策の度合いをさらに減らすことを決定しました。また、証券保有高の削減を継続することも決定しました。
最近の経済指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示しています。第3四半期のGDPは前期比年率2.8%増加し、第2四半期とほぼ同様のペースでした。個人消費の伸びは回復力に富んでおり、設備や無形資産への投資は堅調です。一方、住宅部門の活動は低迷しています。全体として供給条件の改善がこの1年間の米国経済の好調なパフォーマンスを下支えしてきました。当委員会の参加メンバーは、経済予測の概要の中で、今後数年間はGDP成長率が概ね2%前後で堅調に推移すると予測しています。
労働市場は依然として堅調です。給与所得者の増加ペースは年初から鈍化しており、過去3カ月間では月平均17万3000人となっています。失業率は1年前よりも高くなっていますが、11月には4.2%となり、依然として低水準を維持しています。名目賃金の伸びは過去1年間で緩やかになり、雇用者数と労働者数のギャップは縮小しました。全体として、幅広い指標が労働市場の状況は2019年よりも緩和していることを示唆しています。労働市場は大幅なインフレ圧力要因ではありません。SEP(*1)における失業率の中央値予測は、今年末で4.24%、今後数年間で4.3%です。
(*1)SEP ; Summary of Economic Projectionsの略。FOMCメンバーが提示する今後の主要マクロ経済変数の予測値。
過去2年間でインフレは大幅に緩和されましたが、FRBの2%という長期的な目標と比較すると、依然としてやや高い水準にあります。消費者物価指数(CPI)やその他のデータに基づく推計によると、11月までの12カ月間における個人消費支出(PCE)物価指数は2.5%上昇し、変動の激しい食料品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は2.8%上昇しました。長期的なインフレ期待は、家計、企業、および予測者に対する広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、依然として十分に安定しているようです。9月の予測を若干上回り、今年2.4%、来年2.5%となっています。その後、中央値の予測は、私たちの2%の目標まで低下します。
FRBの金融政策は、米国国民のために「最大雇用」と安定した物価を促進するという二重の責務に基づいて決定されます。FRBは、雇用とインフレの目標達成に向けたリスクは概ね均衡していると見ており、両方のリスクに注意を払っています。
本日の会合において、当委員会はフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を0.25%引き下げ、4.50%から4.25%にすると決定しました。私たちは、経済と労働市場の強さを維持しながらインフレのさらなる改善を可能にするため、政策をより中立的な設定へと移行させてきました。本日の措置により、政策金利はピーク時から1%ポイント引き下げられ、政策スタンスは金融引締め状態から大幅に緩和されました。したがって、政策金利のさらなる調整を検討する際には、より慎重な姿勢で臨むことができます。
金融引締め状態を急激にあるいは大幅に緩和しすぎると、インフレの改善を妨げる可能性があることは承知しています。同時に、金融引き締めの緩和ペースが遅すぎたり、緩和幅が小さすぎたりすると、経済活動や雇用が過度に弱まる可能性があります。FF金利の目標レンジの追加調整の規模や時期を検討するにあたり、当委員会は、今後発表されるデータ、変化する見通し、リスクのバランスを評価します。私たちは、あらかじめ決められた道筋を歩んでいるわけではありません。
「経済予測の概要」の中で、FOMC参加メンバーは、今後起こりうるシナリオとして各自が判断した内容に基づきFF金利の適切な水準に関する各自の見解を提示しました。参加メンバーの中央値は、FF金利の適正水準は来年末には3.9%、2026年末には3.4%になると予測しています。これらの中央値予測は、9月時点よりもやや高く、より強気のインフレ予測と一致しています。ただし、これらの予測は当委員会の計画や決定ではありません。
経済情勢の展開に応じて、金融政策は、「最大雇用」と物価安定という目標を最大限に促進するように調整されます。経済が堅調さを維持し、インフレ率が持続的に2%に向かって進まない場合には、金融政策での抑制をよりゆっくりと緩和することができます。労働市場が予想外に弱まるか、インフレ率が予想以上に急速に低下する場合には、金融政策をより迅速に緩和することができます。金融政策は、私たちが直面するリスクや不確実性に対処する上で、適切な位置づけにあります。
技術的な観点では、私たちは、オーバーナイト・レバース・レポ取引(*2)の提供金利を、FF金利の目標レンジの下限に一致させるために引き下げました。これは、通常の設定です。この種の技術的な調整は、金融政策のスタンスとは関係がありません。
FRBには金融政策に関して2つの目標が課せられています。「最大雇用」と物価の安定です。私たちは、「最大雇用」を支援し、持続可能な方法でインフレ率を2%の目標に近づけ、長期的なインフレ期待を適切に維持することに引き続き専心しています。これらの目標を成功裏に達成することは、すべてのアメリカ国民にとって重要です。私たちの行動が、全米の地域社会、家庭、企業に影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公共の使命に奉仕するものです。FRBは、「最大雇用」と物価安定という目標を達成するために全力を尽くします。
(*2)リバースレポ ; FRBが国債などを担保に民間金融機関から資金を借り入れる制度。マネー・マーケット・ファンドや政府支援機関、海外中銀などが主に利用する。市場金利の下限を設定することで、市場金利に低下圧力が生じる可能性を抑制、政策金利を誘導レンジに収めることを目的とする。
[ゴールデンチャート社]
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