7月28日 パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見  2021年07月29日 09時38分

FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント         

  2021年7月28日


  • 今年のGDPはこの10年で最大の成長率を記録するだろうが、なお完全に回復していない。
  • 労働市場は改善しているが、回復はまだ道半ばにある。
  • インフレ率が急上昇しているが、経済再興プロセスでの一過性の現象。
  • インフレ率が長期的に2%に定着し、最大の雇用が達成されるまで緩和政策は維持する。
  • 本日資産購入のペースや構成について議論し、今後の会合で経済データを評価し変更のタイミングを検討していく。変更する場合には事前にお知らせする。


パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文) 

[日本語訳 ゴールデンチャート社]

 こんにちは。米連邦準備制度理事会(FRB)は、議会から与えられた金融政策目標である最大雇用と物価安定の実現を最大の使命としています。

 本日、連邦公開市場委員会(FOMC)は、金利をゼロ近傍に維持するために、資産購入を現状維持することとしました。この措置に加え、金利やバランスシートに関する強力なガイダンスを基に経済回復が達成されるまで、こうした金融政策による経済支援が継続されます。

 ワクチン接種の進展や前例のない財政政策の実施も景気回復を強力に後押ししています。経済活動と雇用に関する経済指標は引き続き改善されていて、今年の実質GDPは過去数十年で最大の成長率が記録される見込みです。この急速な経済成長の多くは、一度は落ち込んだ経済活動の回復が続いていることを反映しています。パンデミックの影響を最も受けたセクターは改善していますが、完全には回復していません。特に家計支出は、経済の再開と継続的な政策支援に後押しされ、急速なペースで増加しています。住宅部門は引き続き非常に好調で、企業投資も堅調なペースで増加しています。一部の産業では、短期的な供給不足が生産活動を抑制しています。特に自動車産業では世界的な半導体不足により、今年に入ってから生産が大幅に減少しています。

 経済活動全般と同様に、労働市場の状況も引き続き改善しています。労働需要は非常に旺盛で、6月の雇用者数は85万人増加し、中でもレジャー・接客部門の増加が顕著でした。とはいえ、労働市場の回復まだ道半ばです。6月の失業率は5.9%でしたが、特に労働市場への参加率は昨年来の低水準から戻らず、この数字は雇用の不足を過小評価していことになります。介護・育児の必要性、コロナウイルスへの不安感、失業保険の給付など、パンデミックに関連する要因が雇用の伸びを圧迫しているようです。これらの要因は今後数カ月のうちに減少し、雇用は堅調に回復していくと思われます。

 景気後退はすべての米国人に平等に降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。特に、景気が改善しているにもかかわらず、サービス業での低賃金労働者やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人に偏った失業状態が続いています。

 インフレ率は急上昇しており、今後数カ月間は高止まりし、その後緩やかに推移すると想定しています。景気が回復し、消費が回復するにつれ、物価上昇圧力が強まります。これは、特に一部のセクターで供給のボトルネックが発生、短期的ではあるものの生産調整がされているためです。これらのボトルネックの影響は予想以上に大きいものですが、これは一過性の供給不足であり、その影響が和らぐにつれてインフレ率は長期的な目標に向かって下がっていくと予想されます。また、パンデミックの初期の非常に低いインフレ率の発生や、過去に上昇した原油価格を消費者向けエネルギー価格に転嫁したこともインフレ率上昇に寄与しましたが、これらのベース効果やエネルギー効果は今後、後退してきています。

 経済再開のプロセスは、パンデミック発生時点で経済が閉塞した時と同様、前例のないものです。再開が進むにつれ、供給ボトルネックや雇用などの問題が供給の迅速な調整を妨げ続ける可能性があり、それによってインフレ率が予想以上に高くなり、高止まりする可能性もあります。金融政策の新しい枠組みにおいて、物価安定を促進するためにも、また、広範で包括的な最大雇用の目標達成を推進する能力を高めるためにも、安定的なインフレ目標の維持が重要であることを強調したいと思っています。経済指標の多くが私たちの長期的なインフレ目標である2%とおおむね一致するようになりると考えられます。インフレに至る道筋や長期的なインフレ期待が、目標に合致する水準を大きくかつ持続的に超えている兆候が見られた場合には、政策のスタンスを調整する準備があります。

 パンデミックが経済にもたらしたインパクトは引き続き縮小していますが、経済見通しでのリスクはなお残っています。ワクチン接種の進展により、COVID-19の感染拡大は抑えられています。しかし、ワクチン接種のペースは鈍化しており、一部の地域ではコロナウィルスのデルタ株が急速に拡大しています。予防接種が継続して実施されることで、正常な経済状況に戻ることができるだろうと思っています。

 FRBの政策は、私たちが米国民のために最大の雇用の確保と物価の安定化を促進することの使命と、金融システムの安定化を促進することの責任に基づいて実施されてきました。当委員会が本日の金融政策の声明で繰り返し述べているように、インフレ率がなお長期的には2%を下回っている中で、われわれは当面、2%を適度に上回るインフレ率の達成を目指したうえで、インフレ率が長期的に平均して2%となり、長期的なインフレ期待値の2%にしっかりと定着すると想定しています。このような雇用とインフレの成果が得られるまでは、金融政策の緩和的なスタンスを維持することを想定しています。金利については、労働市場の状況が当委員会が評価する最大雇用に合致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇した後、しばらくの間、2%を適度に上回る軌道に乗るまで、引き続きフェデラル・ファンド金利の目標範囲を現在の0〜¼%に維持することが適切であると予想しています。

 さらに、私たちは最大雇用と物価安定の目標に向けて実質的な進展があるまで、財務省証券の保有額を毎月800億ドル以上、政府系MBSの保有額を毎月400億ドル以上増やし続けていきます。私たちの資産購入は金融政策の重要な実施手段であります。パンデミックの初期には金融の安定と市場機能の維持に貢献し、それ以降は経済を支える緩和的な金融環境の構築に貢献してきました。

 本日の会合では、昨年12月の資産買入ガイダンス採択以来、目標達成に向けた進捗状況について引き続き議論してきました。また、経済情勢が変化した場合に、資産購入のペースや構成を含めてどのように調整するかについても検討しました。

 参加者は、経済がわれわれの基準とする「実質的な前進」に向けて引き続き進んでいくことを確認しています。今後の会合では、当委員会はわれわれの目標に対する経済情勢の進捗状況を再度評価していき、資産購入のペースを変更するタイミングは、今後のデータに依存することになります。これまで述べてきたように、資産買入額を変更する際には事前にお知らせします。

 最後に、私たちは2つの常設レポ与信枠(スタンディング・レポ・ファシリティ)の創設を発表しました。国内のプライマリー・ディーラーや参加銀行向けのものと、国内外の金融当局向けのものです。これらの与信枠は、金融政策の効果的な実施と円滑な市場機能を支援するために、金融市場を支持する安全装置として機能します。

 最後になりましたが、私たちは、私たちの行動が米国内の地域社会、家族、ビジネスに影響を与えることを理解しています。私たちの行動はすべて、公的な使命のためのものです。われわれFBRは、景気回復が達成されるまでの間、米国経済を支えるためにわれわれでできる限りのことのすべてをしていくつもりです。

 ありがとうございました。皆様からのご質問をお待ちしております。

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