強まる統制、進む風化=天安門事件から36年―中国 2025年06月04日 18時05分

4日、厳重な警備態勢が敷かれた北京の天安門広場
4日、厳重な警備態勢が敷かれた北京の天安門広場

 【北京時事】中国で学生らの民主化運動が武力弾圧された天安門事件は4日、発生から36年を迎えた。当局は追悼の動きなどを封殺。国内では事件の記憶の風化が進んでいる。習近平指導部は政権批判につながる動きに神経をとがらせており、統制は強まる一方だ。
 現場となった北京中心部の天安門広場周辺は4日、普段よりものものしい警備が敷かれた。警察車両が多数配置され、広場に通じる道には「見学予約者以外は通行禁止」との看板が掲げられていた。当局者が自転車で行き交う市民らを止め、身分証をチェックする様子も見られた。
 事件犠牲者遺族の会「天安門の母」は、記念日に先立ち声明を公表。「政府が殺りくで政権の安定維持を図れると信じていたなら、それは人間性を失った政府でしかない」と訴えた。高齢で亡くなった遺族も増えたといい、事件の風化に危機感を示している。
 一方、中国外務省の林剣副報道局長は4日の記者会見で、事件について「政府は既に明確な結論を出している」と従来の見解を繰り返した。中国共産党は、天安門事件を「政治風波(騒動)」と呼んで弾圧を正当化し、事件や関連する情報を徹底的に市民の目から遮断している。
 X(旧ツイッター)には天安門広場で2日朝、恒例の国旗掲揚のイベント中に柵を跳び越えて近づこうとした男性が取り押さえられる動画が投稿された。事件との関連は不明だが、中国国内のSNSでは閲覧できない状態だ。
 米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると今年4月、四川省成都市の道路の高架橋に民主化を求める垂れ幕が掲げられた。実行した男性は知人を介して匿名でXに投稿したが、数日後に特定され当局に拘束されたという。
 中国では、昨年後半から各地で無差別殺傷事件が相次ぐ。背景には、長引く景気低迷による生活苦などがあるとみられる。習政権は、経済的な不満が政権批判に転じるのを警戒しており、言論統制を強化し抑え込みを図る構えだ。 

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