保護主義拡大、日本経済に影=対中国、摩擦は不可避―米大統領選 2024年09月19日

 米大統領選の投開票日まで1カ月半。民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領は、激戦州で接戦を演じている。両氏とも保護主義的な政策を打ち出しているが、世界経済に与えるリスクは、輸入品への一律関税などを掲げるトランプ氏の方が大きいとの見方が大勢だ。自国産業を優先し、対中国で強硬姿勢を強めれば、世界や日本の経済成長が下振れする恐れがある。
 トランプ氏は中国に対する60%もの高率関税や輸入品への一律10%の関税の導入、移民抑制などを掲げる。大和総研の試算では、こうした経済政策は実質GDP(国内総生産)を米国で最大3.4%、日本で0.48%押し下げる。米国のインフレ再燃を招くとされ、米中貿易にマイナスとなるだけでなく、日本の対米、対中貿易に影響。日本企業の対中投資を抑制する可能性がある。
 一方、ハリス氏はインフレ退治や中間層への手厚い支援を訴えるが、明確な通商政策を打ち出していない。バイデン政権による中国への半導体の輸出規制や電気自動車(EV)への追加関税措置などを引き継ぐ公算が大きく、みずほ証券の稲垣真太郎シニアマーケットエコノミストは「米中の緊張関係は続く」と指摘。米中摩擦が強まれば、日本経済もあおりを受けることになる。
 環境政策では、化石燃料の利用拡大を訴えるトランプ氏と脱炭素化を推進するハリス氏は真っ向から対立する。トランプ氏は、自由貿易協定(FTA)の非締結国に対する液化天然ガス(LNG)輸出の新規許可を凍結している現政権の措置を撤回すると訴えており、この点は資源を輸入に頼る日本にとってはプラスに働く。
 ただ、EV普及などに巨額の資金を投じる現政権下で成立した「インフレ抑制法」の撤回を主張。日本総合研究所の栂野裕貴研究員は「北米に進出する自動車関連企業などへの影響は拭えない」と懸念を示す。
 選挙戦を通じて両候補の保護主義的な姿勢は一層強まっており、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収にともに反対するなど既に影響が出ている。米国の自国優先・対中強硬姿勢によって日本企業が海外戦略の見直しを迫られる懸念は今後も残る。 

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