産業界、金利復活に冷静=「ぬるま湯」経営に終止符 2024年03月21日

 産業界は、日銀がマイナス金利政策を解除し、金利を上げたことを冷静に受け止めている。日銀が当面は緩和的な金融環境が継続するとの見方を示しており、急激な金利上昇のリスクは小さいとみているためだ。しかし、「金利のある世界」の復活により、今後は企業経営に影響が出てくる可能性もある。
 「これまでが通常ではなかった。普通の世界に戻っていくということだ」。日本鉱業協会の野崎明会長は、21日の記者会見で利上げについてこう述べ、「(事業に)それほど急激に影響は出てこない」との見通しを示した。
 超低金利下では、企業は設備投資などの資金を低コストで調達できるほか、賃上げの原資も捻出しやすい。一方で、高い金利負担に耐えられる事業構造への変革が進みにくい面もある。経団連の十倉雅和会長は、マイナス金利の解除を「ようやく『ぬるま湯』の時代が終わった」と総括している。
 石油化学工業協会の岩田圭一会長は、金利の復活によって「経営や企業の在り方、新しい環境に応じた施策がおのずと変わる」と見込む。企業は、技術革新などを通じて収益力を高め、金利負担の費用を賄いながら成長していけるかが問われそうだ。
 日銀の統計によると、国内銀行の新規融資金利は、異次元緩和の効果で近年はおおむね1%以下で推移してきた。企業側は超低金利に慣れきっていただけに、さらなる利上げへの警戒感もにじむ。帝人は「金利の急激な上昇は経営にマイナスとなるため、動向を注視したい」との立場だ。
 帝国データバンクが約9万社を対象に分析したところ、借入金利が1%上昇すると、利息負担は年平均で1社当たり273万円増え、約7%の企業が経常損益段階で赤字に転落する。同社は「価格転嫁が進まず、収益力に乏しい中小企業ほど利息負担が大きい」と指摘。「返済負担増に苦慮する中小企業が増加する可能性が高まっている」と警鐘を鳴らしている。 

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