財政健全化目標、難航も=「金利のある世界」重荷―政府・与党 2024年03月14日

 財政健全化目標の見直しに向けた政府・与党の検討作業が今後、本格化する。政府は2025年度に国と地方の基礎的財政収支(PB)黒字化を目指しているが、高齢化に伴う社会保障費の増加などで歳出規模が膨らみ、達成は事実上困難。日銀の金融政策が正常化されて「金利のある世界」が訪れれば、債務の利払い費も増えていく。野放図な財政支出に歯止めをかけたい政府に対し、与党の積極財政派は厳格な目標設定に反対しており、調整は難航しそうだ。
 国際通貨基金(IMF)によると、日本の債務残高対GDP(国内総生産)比は24年時点で251.9%。財政危機に陥ったギリシャを上回り、「世界最悪の水準」(鈴木俊一財務相)だ。内閣府の試算でも、高成長が続いた上に歳出効率化を進めなければ25年度のPB黒字化は見込めない。
 昨年6月に閣議決定された経済財政運営の基本指針「骨太の方針」は、中期的な経済財政の枠組み策定に向けて「24年度に点検・検証を実施する」と明記した。今年の骨太方針は健全化目標が焦点になる。
 自民党の財政再建派が集まる財政健全化推進本部の古川禎久本部長(元法相)は「政治が覚悟を持って、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく姿を見せることが大事だ」と訴える。古川氏は金利の上昇に関し、「財政リスクが高まっている」と危機感を強め、現行のPB目標を堅持する考えを示した。
 財務省は27年度の利払い費が15.3兆円と、24年度の約1.6倍に膨らむと試算。内閣府幹部は「金利上昇局面こそ、健全化に取り組む姿勢を金融市場に示すことが必要だ」と強調する。PBの算出に利払い費は含まれておらず、自民党の財政再建派からは「利払い費を含めた収支で、より厳格にチェックすべきだ」との声も上がる。
 これに対し、安倍晋三元首相が後ろ盾だった積極財政派の財政政策検討本部(本部長・西田昌司参院議員)は、健全化目標によって予算や政策が縛られることがあってはならないとの立場を貫く。同本部に配慮してPB黒字化の達成期限は22年度の骨太方針から明示されなくなった経緯があり、今年も激しい綱引きが予想される。 

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