中国、処理水放出に反対=日本産水産物を禁輸―震災13年 2024年02月24日

 【北京時事】東日本大震災が起きてから13年がたった。中国政府は東京電力福島第1原発で生じた処理水を「核汚染水」と呼び、海洋放出にも反対。昨年8月には日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。日本側は措置の撤回を求めているものの、「話は進んでいない」(日中関係筋)のが実情だ。
 「日本産食品の放射性物質汚染リスクを強く懸念している」。税関総署は昨年8月24日、処理水の海洋放出が始まった直後に声明を出し、日本産水産物の禁輸を発表した。11月に米国で開催された日中首脳会談では、習近平国家主席が処理水の放出を自ら強く批判した。
 日本産水産物の輸入は9月以降、統計上ほぼゼロで推移している。今月24日で放出から半年を迎えたが、中国側は「食品の安全と民衆の健康を守るための、完全に正当かつ合理的で必要な措置だ」(外務省報道官)と主張。周辺国などが参加する国際モニタリング体制の構築を求め、禁輸解除に応じる姿勢は示していない。
 北京市内の日本料理店を最近訪れると、出てきたマグロはスペイン産だった。「以前は日本産だったが、夏から変更した」(店主)という。2023年の貿易統計によると、日本産魚介類の輸入額は前年比で約4割減少。一方、スペインや韓国からの輸入は増えており、日本産からの切り替えが進んでいるもようだ。
 日本側は措置の撤回を求め続けている。今年1月には訪中した日本の財界首脳が会談相手の李強首相に対し、この問題を改めて提起。しかし、中国側の反応はつれなかったという。
 中国の強硬な対応の背景には世論の存在があるとの見方もある。中国では放出直前に官製メディアを通じ、連日、日本産水産物は「安全でない」との報道が続けられた。市民の間で日本の商品を危惧する動きが広がり、塩の買いだめなども起きた。ある日系食品メーカー関係者は「政府はこれまでの主張との整合性についても考える必要があるはずだ」と指摘した。
 別の日系食品メーカー幹部によると、昨年夏には、北京市内の一部スーパーで自社商品の販売を断られる事態も起きた。販売額は処理水放出前の水準に戻っていない。「禁輸は日中関係にとってもマイナスなはずだ。早く撤回してほしい」と訴えた。 

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北京市内の日本料理店=3日
北京市内の日本料理店=3日
北京市内の市場に並ぶ魚介類=7日
北京市内の市場に並ぶ魚介類=7日

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