値崩れ防止へ「価格指定」=在庫引き受け、安値競争に一石―パナソニック 2022年10月06日

 パナソニックホールディングス(HD)傘下のパナソニック(東京)は、家電の値崩れを防ぐため、新たな取引形態の導入を進めている。量販店などに対し、同社が販売価格を指定する代わりに、売れ残った商品の返品に応じる仕組み。商品開発のサイクルを長期化して利益を確保するとともに、過剰な価格競争に一石を投じる狙いもある。
 メーカーが販売価格を拘束することは独占禁止法で禁じられているが、パナソニックが在庫リスクを抱えることでクリアできるという。品田正弘社長は「付加価値のある商品を、価値に見合った価格で買ってもらう取り組み。商品の魅力を正しく伝えたい」と話している。
 同社によると、家電は販売後の価格競争で、販売終了までに2割程度値下がりするのが通例。メーカーは量販店などに値下げ原資として販売奨励金を支払うとともに、価格維持に向け頻繁に新商品を投入する必要があった。
 このため同社は、市場シェアの高いドライヤーや食器洗い乾燥機などを中心に、2020年から新しい取引形態を導入。昨年度はこの取引が家電全体の8%(販売額ベース)を占め、今後3割程度まで増やす方針だ。
 最終的に商品を引き受けてもらえることで、販売店側も在庫リスクを減らせるメリットがある。家電量販大手ヤマダホールディングスは「価格だけで競う時代ではなくなってきており、接客力で勝負できる」(広報)と好意的に受け止める。
 ただ、値引きをしない商品が消費者に受け入れられるには、商品自体の独自性と魅力が不可欠。現状では他メーカーに導入の動きは広がっていない。かつて家電で世界をリードしたパナソニックの商品開発力と「覚悟」が試されている。 

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