不漁のサンマ、資源管理も停滞=ロシア侵攻で国際会議延期 2022年05月01日

 サンマの歴史的不漁が続く中、資源管理の強化に向けた議論が停滞している。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、日本や中国、台湾、ロシアなどがサンマの資源管理策を話し合う「北太平洋漁業委員会(NPFC)」の年次会合が延期となったためだ。過去最低水準にある資源量の回復には漁獲規制の強化が不可欠だが、先行きは見通せない。
 「実のある議論ができない」。日本や米国、中国などの交渉関係者が参加した3月のNPFC代表者会議。ロシアを念頭に置いた「現下の国際情勢を踏まえると開催は困難」との主張を受け、同月末にオンライン形式で開催予定だった年次会合の先送りが決まった。
 サンマの不漁は年々、深刻化している。全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)によると、日本の年間漁獲量はここ20年おおむね10万~20万トン台。しかし、2021年は1万8291トンと直近のピークだった14年の10分の1未満にまで落ち込み、3年連続で過去最低を更新した。水揚げされた市場での取引価格も上昇を続け、21年は前年比1.3倍に高騰。秋の味覚は食卓から遠のくばかりだ。
 サンマの不漁は、地球温暖化などが原因とされる。海水温上昇を受け、日本近海に来遊するサンマの量は大きく減少している。日本の沿岸に回遊する前に中国や台湾の大型漁船が公海で大量に「先取り」していることも、不漁に拍車を掛けている。
 日本は公海での漁獲規制の強化を模索。NPFC年次会合の早期開催を目指すとともに、同じ沿岸漁業国であるロシアと連携して中国の公海操業を抑制したい考えだ。しかし、ロシアへの経済制裁を強める中で協力関係を築けるかどうかは不透明。日本は不漁に歯止めをかける有効な手だてを見いだせずにいる。 

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