世界100社に課税強化=米、法人税改革で新提案 2021年04月12日

 【ワシントン時事】多国籍企業への課税強化に向けた国際交渉が加速する可能性が出てきた。米国は、世界的な巨大企業100社程度を対象に、各国での売上高に応じて課税する新ルールを主要国に提案。今年半ばの合意を呼び掛けた。IT企業に限らず自動車メーカーなども含める考えで、日本企業にも影響が及ぶ恐れがある。
 国際的な法人税改革をめぐる議論は、経済協力開発機構(OECD)を舞台に(1)巨大IT企業へのデジタル課税(2)企業の課税逃れや行き過ぎた節税を防ぐ世界共通の最低税率―について、セットでの合意を目指して進められている。日本など約140カ国・地域が参加しているが、デジタル課税に米国が反発し、難航していた。
 米国の新提案では、課税強化の対象を巨大多国籍企業100社程度とした。グーグルなど「GAFA」と呼ばれる米IT大手だけが標的になるのをかわす狙いだ。
 米紙ポリティコは「米政府は、年間売上高200億ドル(約2兆2000億円)以上のすべての多国籍企業が法人税を負担することを望んでいる」と報道。自動車大手などが事業を行う国で売上高に応じて納税することを想定した案という。
 一方、法人税率はこれまで、各国が投資誘致や企業の競争力強化を狙い、競うように引き下げてきた。米国はトランプ政権時に35%から一気に21%へ、日本も国と地方を合わせた実効税率を2014年度の34.62%から18年度は29.74%へと段階的に下げた。
 その結果、米法人税収の国内総生産(GDP)比はこの3年ほどで2%から1%へと縮小。先進国平均の3%強を大きく下回る。イエレン財務長官は税率を28%に上げる必要性を強調。減税競争を止めるために、世界共通の最低税率の導入でも合意すべきだと訴えた。
 各国では、新型コロナウイルス危機対策の財源確保が課題となっている。米国の呼び掛けに「(国際合意の)機運が高まった」(麻生太郎財務相)、「賢明で興味深い」(ルメール仏経済・財務相)と評価の声が上がる。
 ただ、低い法人税率で外国企業を誘致してきたアイルランドは「懸念している」(ドナフー財務相)と警戒。巨額インフラ投資の財源確保という米政権の思惑が絡むだけに、多くの国が関わる税制改革の交渉は曲折が予想される。 

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