自動車認証、中韓も応札へ=日系企業「技術流出」危惧―インドネシア 2021年04月07日

 【ジャカルタ時事】インドネシア政府が計画する自動車認証試験場の整備事業の入札に、日本のほか韓国と中国の企業も参加することが分かった。インドネシアの自動車市場で日系メーカーの占有率は96%超に上るが、近年は中韓が攻勢を強化。日本企業の間に「落札できなければ技術が流出する」との危惧が広がっている。
 運輸省によると、西ジャワ州ブカシの認証試験場を、国際標準に適合した審査ができる体制に整備。電気自動車(EV)用を含め19の検査設備を造り、「東南アジア最大」規模とする。
 運輸省高官は時事通信の取材に対し、政府の支出を抑えるため、整備事業は官民連携で行うと説明。「日本のほか韓国と中国の企業が入札に応じる予定で、既に意向表明書を提出した」と明かした。
 日本企業・政府の関係者によると、日本からは商社を中心とした企業連合が応札する見通しだが、「外国勢に取られたら、データや技術が漏れかねない」と危機感を強めている。試験場は操縦や制動から燃費、騒音まで幅広く自動車の性能を調べ、基準に適合しているかを確認する施設で、先端技術も扱うためだ。日本では国が運営しており、「流出」の恐れは原則ない。
 インドネシアの自動車市場で日系メーカーのシェアは2020年に96.7%だった。近年やや減少傾向にあるものの高い水準を維持し、中国は1.6%、韓国は0.3%にとどまる。だが、日系企業は「今のシェアが続くとは限らない」とみており、EV投資で急速に存在感を増した中韓の動きを警戒する。
 インドネシア政府は19年、EV開発推進に関する大統領規定を制定。22年から本格的なEV生産を始め、25年にハイブリッドを含めた電動車の市場シェアを25%まで引き上げる目標を掲げた。
 急速なEV化の方針に、中韓の企業は即応した。インドネシア政府や地元紙によると、同国初の工場を建設中の韓国・現代自動車は、22年からEV生産を始める。EV用電池の工場も、韓国・LG化学とともに建設する計画を立てている。
 今年3月にはEV電池生産の国営持ち株会社が発足したが、パートナー候補に挙がった外資企業は、日米の各1社に対し中国が3社、韓国が2社を占めた。中韓の各1社とは投資額を含めた協議が具体化しているという。
 自動車の電動化を進めれば、部品の半分が不要になるとされる。インドネシアで生産体制を築いた日本メーカーにとって、雇用確保の点でもEV化は悩ましい問題だが、「中韓はシェアがない分、身軽に動ける」(関係者)。試験場の落札に逆風が吹く中、日本側は雇用や輸出への貢献を強調し、インドネシア政府に働き掛けを強めている。 

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