米インフラ投資、難航必至=看板政策で与野党激突へ 2021年04月01日

 【ワシントン時事】バイデン米大統領は3月31日、8年間に2兆ドル(約221兆円)超をインフラ整備や環境対策などに投じる目玉政策を打ち出した。議会与野党はインフラ重視の姿勢で一致するが、財政支出の規模や増税案をめぐり衝突するのは確実。バイデン氏は「結束すればできる」と強調するが、巨額を投じる成長戦略の実現は難航が必至だ。
 「世界で最も強く、最も革新的な経済をつくる」。バイデン氏は演説で、インフラ投資が国際競争力を高め「数百万の高賃金雇用を創出する」と力を込めた。
 米国にとってインフラ投資の拡大は急務だ。総合的な国際競争力では世界トップを誇るが、インフラに限ると日本など主要国に大きく劣る。新型コロナウイルス危機は、学校の遠隔授業が十分にできないなど高速通信網の整備が遅れている弱点をさらけ出した。
 超党派によるインフラ投資計画は、トランプ前政権下でも浮上。バイデン氏はインフラを突破口に、雇用拡大、企業や富裕層への増税を通じた格差是正へ道筋を付けたい考えだ。
 しかし野党共和党は、インフラ計画の中に与党民主党が優先して実現したい環境対策、社会福祉の拡充策などが埋め込まれていると批判。共和党のマコネル上院院内総務は、成長戦略は「大増税と雇用喪失を招くトロイの木馬」と切り捨てた。
 財政悪化への懸念も強い。インフラ投資を含まない状況で連邦政府債務の国内総生産(GDP)比は2031年度に過去最悪の107%に膨らむ見通し。財政懸念から金利が上がれば、政府の資金がインフラではなく利払いに回りかねない。
 上院(定数100)で法案を通すには60人の賛成が必要だが、与野党の勢力は伯仲。このため民主党は3月、特別な手続きを使い同党単独で追加のコロナ経済対策法案を通した。バイデン氏は今回、超党派による成長戦略の実現を望んでいる。一方で、高い支持率を保つ現在は公約達成の環境として「めったにない機会」(英フィナンシャル・タイムズ紙)との見方もあり、共和党を切り捨て、民主党主導で成立を図る可能性もある。 

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