「空箱」会社の上場、米国で急増=日本も解禁検討、過熱警戒 2021年03月31日

 【ニューヨーク時事】新興企業などの買収を目的とし、自らは具体的な事業を持たない「空箱」会社の上場が米国で急増している。米調査会社によると、上場件数は1~3月に296件と、過去最高だった2020年の通年実績を既に上回り、調達額は867億ドル(9兆6100億円)に達する見通し。日本でも解禁に向けた検討が進むが、投資の過熱や弊害を指摘する声もある。
 上場が相次ぐのは、特別買収目的会社(SPAC)。設立から約2年以内に有望な未公開企業を探し出して買収し、買収された企業が存続会社となる。魅力的な企業を買収すれば株価が上がり、投資家は値上がり益を得られる。収益はSPAC運用者の「目利き力」次第となるため、「白紙小切手会社」とも呼ばれる。
 米調査会社ルネサンス・キャピタルによると、20年のSPAC上場件数は前年比約4倍の247件、調達額は7倍近くに拡大。米国では、大規模な金融緩和を背景に株式などへの投資が膨らみ、SPACもその「受け皿」となった。元スポーツ選手を大株主に招くなど、著名人の関与もブームを後押しした。
 買収される企業にとっては、面倒な手続きを省き、短期間で上場できる利点がある。ソフトバンクグループが出資する共用オフィス運営の米ウィーワークは、SPACとの合併を通じて年内に上場すると発表。昨年には新興の米電気自動車メーカーなどが上場した。
 ただ、人気に陰りも見え始めている。「SPACへの無差別な買いが続いていたが、2月中旬ごろに売りに転じた」(ルネサンス社)といい、1~3月の上場初日の株価は平均で約3%下落した。市場では「中期的には持続可能ではない」(米投資銀行)との声が上がるほか、情報公開が不十分な「裏口上場」だとの批判も根強い。
 ロイター通信によると、米証券取引委員会(SEC)は金融機関に対し、SPACの監視態勢や内部統制などの情報提供を要請した。問題を抱える企業の上場に警戒が強まる中、当局が近く本格調査に乗り出すとの見方も広がっている。 

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