地域課題、知恵と工夫で=官民若手、NPO立ち上げ―「ナッジ」理論、全国展開へ 2021年03月22日
ごみのポイ捨てや野生動物対策など、幅広い行政課題を知恵と工夫で解決する試みに関心が高まっている。「ナッジ」と呼ばれる行動経済学の理論を使って行動を誘導する「仕掛け」を駆使するのがポイント。一部の先進的な自治体による取り組みはあったが、これを全国に広めようと、官民の若手職員が新たにNPO法人を立ち上げた。
自治体の財政運営が厳しさを増す中、行政ニーズは多様化しており、これまでも独自の判断でお金を掛けずに知恵を凝らした施策が講じられる例はあった。例えば京都府宇治市では、犬のふんが放置された場所の地面に、黄色いチョークで発見日時などを記す「イエローチョーク作戦」を考案。ふんの放置件数の減少につなげた。しかし、この作戦はナッジを意識したものではなかった。
こうした取り組みをナッジ手法として体系化し、全国の自治体で共有してより良い施策につなげたい―。今年1月、そんな思いを抱く中央省庁や自治体、民間企業などの若手有志がNPO法人「PolicyGarage(PG)」を発足させた。
2月には、ビデオ会議システム「ズーム」を使い、3カ所で研修を開催。このうち、沖縄県では、地球温暖化防止活動に取り組む市民ら約10人が受講した。
研修では、ごみ箱をバスケットゴールに見立てることで、ごみを中に入れる人が増えた例などが紹介された。宮古島市で海の環境保全に取り組む春川京子さんは受講後、「ナッジの先行事例を基に、行政などの協力を得て効果的なごみのポイ捨て防止につなげたい」と話した。
北海道の研修には約20人の職員が参加。野生グマの人里侵入対策などにナッジを応用したい考えで、今後、検討を本格化させる。道気候変動対策課の宇山生朗さんは「ナッジを活用した行動デザインの考えを道内に広めたい」と意気込む。
PGは4月、ナッジ専門家らを招いたシンポジウムをズームで開催する。代表理事で現職の財務官僚でもある津田広和さん(36)は「全国に仲間を増やし、日本でムーブメントを起こしたい」と呼び掛けている。