同盟国と結束、中国に対抗=戦略策定作業、本格化―米政権 2021年03月20日

 【ワシントン時事】バイデン米政権は、外務・国防担当閣僚をインド太平洋地域に送り込み、同盟国との結束を固め、台頭する中国を抑止するというアジア外交の基本方針を実践に移した。アラスカ州アンカレジで18、19両日に行った米中外交トップ会談では、予想以上の中国の反発に直面。バイデン政権は一連の会談に加え、4月前半の菅義偉首相の訪米も踏まえ、トランプ前政権の「米国第一」に代わる、同盟重視の対中戦略の策定作業を本格化させる。
 バイデン政権は「21世紀最大の地政学的試練」と位置付ける中国に対抗するため、同盟国との連携や国際機関との協調、自由・民主主義の価値の強調を通じ、対中国で「強い立場」を構築することに腐心する。閣僚の初外遊としてブリンケン国務長官、オースティン国防長官が日韓を歴訪したのも、その一環だ。
 両閣僚の出発直前には、バイデン大統領自身が日米とオーストラリア、インド4カ国の枠組み(通称クアッド)で初となる首脳会談をオンライン形式で主催。価値を共有する域内の民主主義国の連携を強化する狙いがある。
 ただ、クアッド参加国や韓国と米国との間に、温度差が存在するのも事実だ。18日の米韓外務・国防閣僚協議(2プラス2)後の共同声明は、中国を名指しで批判することを避けた。中国との対立を懸念する韓国に配慮した結果で、対中国という視点での同盟網強化の限界を予感させた。
 ブリンケン氏はこの後、氷点下のアラスカで中国の楊潔※(※竹カンムリに褫のつくり)共産党政治局員らを迎えた。
 ブリンケン氏は会談の冒頭、香港の統制強化などに言及し、「世界の安定を維持するルールに基づく秩序を脅かしている」と中国を批判。報道陣を前にした約1時間にわたる応酬に発展し、ワシントン・ポスト紙(電子版)は、高圧的に他国を非難する中国の「戦狼外交」をバイデン政権が初めて体験したと伝えた。
 ただ、米研究機関「東西センター」のデニー・ロイ上級研究員は楊氏の発言に関し「国内向けの点数稼ぎ」と静観する。中国との競争を長期的なものとみる米側は、会談を「互いを理解するための最初の協議」(米高官)と位置付けており、対立は織り込み済みだ。ロイ氏は「米側が会談の期待値を下げ、中国をパートナーでなく、冷徹な対抗相手とみて議論を始めたのは正しかった」と指摘した。 

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バイデン米大統領=18日、ワシントン(AFP時事)
バイデン米大統領=18日、ワシントン(AFP時事)

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