東北進出企業、26%増=震災10年、復興需要後に課題―東京商工リサーチ 2021年03月10日

 東京商工リサーチは10日までに、東日本大震災からの10年間で、東北6県に域外から進出している企業の数が約26%増えたと発表した。道路建設やインフラ整備など復興関連工事に伴って建設業が1.8倍に急増した。ただ、復旧・復興工事の完了とともに建設需要も減少し始めている。復興需要に頼らない新たな産業育成が課題だ。
 商工リサーチが、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島の東北6県以外に本社を置き、これら域内に支店や営業所、工場などを設けている企業数を調べた。震災直後の2011年3月には1万3553社だった進出企業数は、21年2月に1万7046社に増加。伸び率が最も大きかったのは建設業(81%増)で、サービス業など(60%増)、情報通信業(49%増)と続いた。
 ただ、6県で新たに設立された法人数の推移を見ると、年間の設立数は13年をピークに減少傾向。域内企業全体の売上高も19年度を境に減収に転じ、震災後の景気をけん引してきた建設業は17年度から減収が続く。商工リサーチは、復興特需に支えられた地域経済は「転換期を迎えている」(情報本部)と指摘する。
 こうした中、自律的な成長のためには製造業のけん引が期待される。自動車や半導体などの工場が集積し、域外から進出した企業数は最多の4615社に上る。新型コロナウイルス禍を受け世界的なサプライチェーン(供給網)の見直しが進む中、商工リサーチは「国内回帰の選択肢として東北の存在感が増している」との見方を示している。 

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