遠い本格回復=コロナ禍、飲食・宿泊再び苦境―消費マインド冷え込み・GDP 2021年02月15日

 2020年10~12月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比12.7%増と2桁成長となった。新型コロナウイルス感染拡大で停滞した経済活動が国内外で持ち直し、輸出や個人消費が全体を引っ張った。ただ、11月後半から感染が急拡大し、1月の緊急事態宣言の再発令で、飲食や宿泊などサービス業は再び苦境に直面。消費マインドは冷え込み、コロナ禍からの本格的回復は依然見通せない。
 ◇製造業は復調加速
 「(10~12月期は)主要地域すべてで増益を達成した」。21年3月期業績予想を上方修正したトヨタ自動車の近健太執行役員は販売の復調ぶりに自信を深める。20年度のグループ全体の世界販売計画(ダイハツ工業、日野自動車を含む)を973万台(従来942万台)に引き上げた。10~12月期GDPでは輸出が急増。自動車関連に加え、高速大容量規格「5G」普及で情報関連製品も好調で、設備投資は3四半期ぶりにプラスに浮上した。
 ◇やむなく休業
 消費は、政府の需要喚起策「Go To」キャンペーンの効果で回復基調を保ったが、足元では感染急拡大で消費活動の勢いは鈍化している。群馬県草津町にある草津温泉では観光支援策「Go To トラベル」事業で11月には前年を上回る観光客を集めた。しかし、12月28日のトラベル事業の全国一斉停止で「足元の客足は前年の半分にも満たない。臨時休業する旅館・ホテルも出ている」(草津温泉旅館協同組合)という。
 飲食店の営業時間は宣言再発令で午後8時までに前倒しされた。日本フードサービス協会によると、12月のパブ・居酒屋の売上高は前年同月比6割減。休業中の東京都港区の居酒屋店主は「午後8時まででは商売にならない。今は資金繰りで頭がいっぱい」と悲鳴を上げる。
 ◇コロナ倒産、1000件突破
 日本経済研究センターによる民間エコノミスト調査(10日公表)では、1~3月期の実質GDP成長率は年率5.47%減と再びマイナス成長を見込む。東京商工リサーチの調査では、コロナ関連倒産は1063件(15日時点)に達した。業種別では飲食業(190件)、宿泊業(67件)が多く、商工リサーチは「息切れ企業の増加で倒産件数は急増する恐れがある」と分析する。
 倒産に伴い失業者が増えれば、消費者心理は一段と冷え込む。国内で新型コロナワクチンの接種がようやく始まる見通しとなったが、収束への道筋が明確にならない限り、経済活動が制約され、景気は腰折れする危うさを抱え続ける。 

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