日銀マイナス金利、遠のく出口=29日で導入決定5年 2021年01月28日

 日銀が大規模金融緩和の一環として、異例のマイナス金利政策の導入を決めてから29日で5年。目標とする2%の物価上昇率は実現できず、低金利の長期化で銀行の収益圧迫や年金基金、生命保険会社の運用難といった「副作用」も目立つ。新型コロナウイルス感染の再拡大による景気低迷で、「出口」は一段と遠のいている。
 マイナス金利政策は、民間銀行が日銀に資金を預ける「当座預金」の一部に、マイナス0.1%の金利を適用。市場金利を引き下げて企業の前向きな投資を促し、景気浮揚とデフレ脱却を狙った。ただ、日銀にお金を預けた銀行が、利息を受け取るのではなく逆に支払うことになる異例の手法。導入を決めた2016年1月の金融政策決定会合では、政策委員9人の賛否が5対4に割れた。
 日銀の狙いとは裏腹に、その後、物価上昇率は一度も目標の2%に届いていない。また、銀行の貸出金利が低下したため、ほぼ0%に張り付いた預金金利との「利ざや」が縮小した。全国銀行協会の三毛兼承会長は「金融機関の収益環境は確実に悪化傾向をたどった」と指摘。銀行は手数料収入の拡大など収益源の多様化を迫られている。
 これに対し、黒田東彦日銀総裁は現在もマイナス金利について「効果が副作用を上回ってきたから続けてきた」と自信を示す。新型コロナ感染の再拡大に伴う緊急事態宣言の再発令で、足元ではサービス業を中心に経済活動が低迷している。物価も下落に転じ、金融引き締めと映るマイナス金利の解除は当面、困難な情勢。日銀は今年3月をめどに金融緩和策を点検するが、マイナス金利政策の大枠は継続する方針だ。 

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