経済再生へ「大きな政府」=分断生む市場主義を改革―米新政権 2021年01月20日

 【ワシントン時事】新型コロナウイルス危機は、米国の深刻な経済格差、社会の分断を浮き彫りにした。問題の背後には競争や効率を最優先する市場主義経済がある。バイデン新政権は、こうした在り方を問い直し、積極財政による「大きな政府」で経済への関与を深め、再生に挑む。
 「米国が21世紀の世界を主導するため大きな政府を目指す」。バイデン新大統領は政府が経済活動で大きな役割を果たすことで、企業の競争力強化や雇用創出が可能と主張。規制など公的介入を最小限にすべきだとする「小さな政府」の擁護論に反論する。
 4年間大統領を務めたトランプ氏は、グローバル化で衰退した国内製造業の再興と中所得層の収入増を経済成長で果たすと公約。大型減税と規制緩和による景気底上げを目指した。
 しかし、減税や成長期待で上昇した株価の恩恵を大きく受けたのは富裕層や企業だ。製造業が復活したとは言えず、米中貿易戦争の影響は農家を含め中低所得層にしわ寄せが及んだ。
 経済協力開発機構(OECD)の調査では、先進7カ国(G7)で所得格差が最も大きいのは米国。格差の固定化は深刻な分断と二極化をもたらし、トランプ氏の支持者による連邦議会乱入事件は、問題の放置が社会の安定を損なうリスクを露呈した。
 米景気はコロナ感染再拡大で停滞感が強まる。回復のカギを握るワクチン普及が遅れれば、失業や格差の問題が長期にわたって悪化しかねず、バイデン氏は政府主導によるコロナ対策を急ぐ。
 新政権の大型財政政策は連邦最低賃金の時給15ドル(約1560円)への引き上げなど、今後10年間で推計11兆ドル(約1140兆円)にも達する。バイデン氏は「応分の負担」として富裕層と大企業への増税を明言しており、富の再分配による格差是正に取り組む。
 ただ、政府の大きな関与は保護主義と隣り合わせだ。新政権の公約には公共事業で米製品を優遇する内向き色ものぞく。競争や経済効率を無視すれば、成長が犠牲になりかねない。
 バイデン氏は「国が分断していれば経済は再生しない。唯一、国民が団結することで可能になる」と危機感を訴える。改革に対する国民の期待が失望に変わるまでの時間は長くはなく、新政権は短期間で目に見える成果が求められる。 

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