レコード人気、復活じわり=生産枚数、10年で12倍―若者つかめ、業界一丸 2021年01月04日

 CDの登場で低迷していたレコード人気が復活しつつある。生産枚数はこの10年間で約12倍に増え、新曲やアルバムをレコードで発売するアーティストも相次ぐ。若い世代をはじめ、さらなるファン獲得につなげるべく、業界は一丸となって普及に努めている。
 昨年12月半ばの昼下がり。JR新宿駅近くにある「タワーレコード新宿店」のレコード専門フロアには、目当ての一枚を熱心に探す愛好家の姿があった。昭和歌謡を買いに訪れた会社員男性(50)は「レコードを交換したり針を落としたりと手間はかかるが、『音楽を聴いている』感じがしていい。ジャケットや歌詞カードを見るのも楽しみの一つ」と魅力を語る。
 需要の高まりを受け2019年3月にオープンした専門フロアは、Jポップやジャズ、ロック、ソウルなど計約7万枚を取り扱う。青木太一店長(44)は「スマートフォンなどで音楽を聴くのでは物足りず、巣ごもり需要も相まってアナログの音を楽しみたい人が増えているのでは」とブームの背景を推測する。
 日本レコード協会(東京)によると、レコードの生産枚数は1970年代後半に年間約2億枚と全盛を極めたが、CDの台頭により2009年には約10万枚に減少。そこから増加に転じ、19年は約122万枚まで盛り返した。
 近年ではミスターチルドレンやきゃりーぱみゅぱみゅといった人気アーティストも、新曲やアルバムをレコードでも発売した。ストリーミング(逐次再生)などの配信サービスが隆盛な中、協会の担当者は「若年層にもレコードの裾野が広がり、聴き方が多様化している」と指摘する。
 普及や情報発信につなげようと業界一丸となった取り組みも進む。60年以上にわたりレコード製造を続ける「東洋化成」(東京)は、レコード会社約30社や販売店と協力し、「レコードの日」の11月3日などに合わせてイベントを開催。新譜や往年の名曲といった約100タイトルを年に数回、一斉販売する。一度に十数万枚を生産することもあり、海外から問い合わせが寄せられるなど反響は大きいという。
 アニメソングに特化した販売イベントも春に計画している。東洋化成営業部の服部亜美さん(25)は「若い人がレコードの良さに気付くきっかけになってほしい」と期待を込める。 

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レコード専門フロアを設けたタワーレコード新宿店の青木太一店長=2020年12月18日、東京都新宿区
レコード専門フロアを設けたタワーレコード新宿店の青木太一店長=2020年12月18日、東京都新宿区

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