米中、覇権めぐり激突=出口なき大国間競争―バイデン次期政権に重い課題 2020年12月30日

 2020年は新型コロナウイルス危機が引き金となり、貿易摩擦に端を発した米中の対立が安全保障、先端技術、人権問題にまで際限なく広がった。民主主義国の盟主として覇権を守りたい米国、共産党一党支配で台頭する中国。超大国のいがみ合いが「新冷戦」の様相を呈する中、国内総生産(GDP)の米中逆転も迫っている。来月20日に発足するバイデン次期米政権は重い課題を抱え込む。
 ◇民主主義対共産主義
 「中国との関係を完全に断ち切る」。コロナウイルスの発生源をめぐる中国との政治的なさや当てが激化した今年5月、トランプ米大統領はデカップリング(分断)の可能性にまで踏み込んだ。中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)排除、南シナ海への空母派遣、香港・台湾問題をめぐる圧力。なりふり構わぬ強硬策は、経済・軍事両面で影響力を強める中国への焦りの裏返しでもある。
 米国の政治学者イアン・ブレマー氏(ユーラシア・グループ社長)は、1979年の米中国交正常化以降で「最悪の関係」と憂える。トランプ政権は中国の発展を後押しして民主化を促す「関与政策」を大きく転換。今年は「中国共産党とそのイデオロギー」(ポンペオ国務長官)にも矛先を向け、民主主義対共産主義という対立軸を打ち出した。
 ◇米危機尻目に中国飛躍
 一方、長期政権を狙う中国の習近平国家主席は今年、35年までに「中等先進国」入りする目標を掲げたほか、安全保障を脅かすと見なした外資を規制する輸出管理法を施行した。21年の共産党創立100年、22年の共産党大会という重要な節目を前に弱腰姿勢を見せることはできず、対米摩擦で一歩も譲らない構えだ。
 米同時多発テロ、リーマン・ショック、新型コロナ流行。危機に襲われる米国を尻目に、中国経済は強い回復力を見せつけてきた。専門家は中国のGDPが30年前後に米国を抜いて世界一になると指摘する。
 ◇戦前並み貿易障壁
 出口の見えない大国間競争は、戦後の世界経済秩序を形作ってきた自由貿易体制に影を落とした。米中が掛け合う関税率は一時、平均20%前後に達し、「戦前並みの貿易障壁」(米ピーターソン国際経済研究所)が築かれた。ロス商務長官によると、米国が輸出禁止対象に指定した中国企業は約300社。一連の対中制裁を受け、取引のある日本企業800社超に影響が及んでいる。
 トランプ政権の対中強硬路線は、知的財産権保護などの国際ルールを無視して国力増大を図る中国の問題点も浮き彫りにした。01年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟に向けた交渉に関わったシャーリーン・バシェフスキー米通商代表部(USTR)元代表は「中国経済の飛躍の裏にルール違反がある。それをただす米国の指導力こそ重要だ」と語る。
 バイデン次期大統領は今月28日、中国との対立について、日本など同盟国との協力を念頭に「民主主義国と連携することで、米国の経済的な影響力は倍以上になる」と強調した。覇権をうかがう中国への対抗心をむき出しにした形で、人権問題ではトランプ政権より厳しい姿勢で臨む構えを見せた。 

特集、解説記事