米市場、ワクチン普及に期待=コロナ禍でも株高維持―20年 2020年12月25日

 【ニューヨーク時事】新型コロナウイルスの感染拡大で景気が低迷する中、2020年の米株式市場は、米政府の巨額財政出動や大規模金融緩和に支えられて早々に立ち直り、株価は上昇した。代表的指標のダウ工業株30種平均は、史上初めて3万ドルの大台に乗せた。21年については、春以降の新型コロナワクチン普及を見込み、楽観的な見方が多い。金融政策の動向にも注目が集まっている。
 1月に2万9000ドルを超えたダウ平均は、米国で新型コロナの流行が本格化して経済活動の制限が広がった3月に急落した。リスク回避に走った投資家の投げ売りで、最大1日3000ドル近く下げた。一時1万8000ドル台まで落ち込み、市場関係者からは「どんなに割安でも買いに行ける状況ではない」(日系証券)と悲鳴が上がった。
 しかし、米政府が3月末、2兆ドル(約210兆円)超の経済対策を打ち出すと反転。外出制限などで経済活動が事実上停止し、実体経済の悪化が深刻化する中でも、株価は上昇を続けた。成長期待が大きい巨大IT企業などに資金が集中した。「米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和がハイテク株のバブルを生んだ」(米銀アナリスト)との指摘もあった。
 21年の米株式相場は、ワクチンの動向がカギを握る。市場は、春以降にワクチンが本格普及し、実体経済が回復するとのシナリオを描き、今月に入りワクチンが実用化されると、早くも経済活動の正常化を織り込み始めた。ただ、米国では、ワクチンの安全性を不安視する声も少なくない。4割が早期の接種に消極的との調査もあり、普及が順調に進むかは不透明だ。
 一方、FRBは今月、現行の量的緩和策の長期化を示唆し、景気を支え続ける構えを示した。市場では「FRBが市場への流動性供給への意思を変えるとはみていない」(独保険大手アリアンツ主任経済顧問のモハメド・エラリアン氏)として、21年中は量的緩和を維持するとの見方が大勢。ワクチン普及までは、金融政策による下支えを期待する声が多い。 

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