遺伝情報を活用、初の実用化=開発期間を短縮―mRNAワクチン 2020年12月02日

 米製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンが英国で承認された。遺伝情報を記録した「メッセンジャーRNA(mRNA)」を活用した新しいタイプで、従来のワクチンより開発期間を短縮できる利点がある。ただ、実用化されたのは今回が初めてで、専門家は「効果と副作用を長期的に確認する必要がある」と指摘した。
 mRNAワクチンは、ウイルスの遺伝情報を調べて人工的にmRNAを複製し、微細な脂質粒子に包んで接種する。細胞に取り込まれると、新型コロナのたんぱく質が作られ、免疫ができる仕組みだ。mRNAは体内で分解されやすく、安全性も高いとされる。
 従来のワクチンは、ウイルス自体を増やして不活化したり、弱毒化したりする必要があった。しかし、mRNAはウイルスが変異しても容易に複製でき、短い期間で開発や製造ができる。
 欧米のベンチャー企業を中心に、この10年間で、がんの治療薬などmRNAを使った研究が本格化した。新型コロナ用ワクチンをファイザーと共同開発した「ビオンテック」は独のベンチャー、米で緊急使用許可を申請した「モデルナ」も米のベンチャーだ。
 一方、mRNAワクチンは変質しやすく零下20~70度で保管する必要がある。使用期間は短く、多くの人に接種するには課題も残る。
 RNAを使った治療が専門の内田智士・京都府立医科大准教授は「免疫が持続するかが鍵になる。効果や副作用は長期間検証する必要があり、従来のタイプも含めてさまざまなワクチン開発が並行して進むと思う」と話す。 

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