RCEP、中国の影響増大=大国インド不参加、復帰見えず 2020年11月15日

 日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などが進めてきた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉が15日、インドを除く15カ国で合意した。インド抜きの協定となったことで、交渉参加国の中で最大の経済規模を持つ中国の影響力が高まるのは必至。インドの交渉復帰は見通せず、日本は国際社会で力を増す中国と対峙(たいじ)する覚悟が問われる。
 当初の交渉参加16カ国のうち、人口規模は中国が約14億人、インドが約13億人と他国を圧倒する。尖閣諸島をめぐる緊張など中国との懸案を抱える日本は、同じく中国と領土問題で対立するインドとの協調を重視。インドが昨年、対中貿易赤字の増加を懸念して交渉から離脱してからも「インドのいないRCEPはバランスを欠く」(交渉筋)として粘り強く復帰を呼び掛けてきた。
 しかし、インドの説得に時間をかけ過ぎれば他の参加国の合意に向けた機運が失われかねないとの判断に傾き、インド抜きの形となった。専門家の間では「インドのモディ政権は国内産業保護を重視しており、早期の交渉復帰は難しい」(国士舘大学の助川成也教授)との見方が大勢となっている。
 今後の日本の通商戦略は、インドを含め政治経済体制の近い国々に働き掛けて自由貿易圏を拡大することが柱となりそうだ。米国は離脱したもののカナダやメキシコなどが加わる環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が戦略の土台となる。
 国際貿易投資研究所の高橋俊樹研究主幹は、RCEPを足掛かりに中国の発言力が強まると分析。英国やタイがTPPに関心を示していることから「日本はTPPの対象国を広げるなど、存在感を高める努力をすべきだ」と指摘する。日本は自由貿易拡大の努力を通じて中国に対抗する必要がありそうだ。 

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