地銀再編へ連携=政府・日銀、異例の優遇策―くすぶる慎重論、効果未知数 2020年11月14日

 政府・日銀が地方銀行の再編支援で連携を深めている。日銀は経営統合する地銀に上乗せ金利を支払うと発表。金融庁も統合費用の一部を補助する。地銀の統合・再編に意欲を見せる菅義偉首相の意向を受け、そろって異例の措置に踏み切った格好だ。もっとも、「決して金融再編の後押しにはならない」(島根銀行の鈴木良夫頭取)と慎重に構える地銀もある。どこまで実際に再編が進むか、効果は未知数だ。
 日銀が10日発表した「特別制度」は、統合を機関決定した地銀などを対象に、日銀に預ける「当座預金」に0.1%の金利を上乗せする措置。金融機関に特定の経営判断を促す政策は極めて異例で、日銀内部にも「政府の仕事との境界があいまい」との困惑がある。
 金融庁は預金保険機構の利益剰余金を活用し、合併時に必要となるシステム投資や店舗統廃合のコストの3分の1程度を補助する枠組みを来年夏にも創設する方針。巨額のコスト負担を軽減することで地銀の統合を促す。今月27日には、一定条件を満たせば独占禁止法の適用を除外して統合を容易にする特例法も施行される。
 日銀などの動きの背景にあるのは、新型コロナウイルスの影響で、地銀の経営基盤が悪化することへの危機感だ。コロナ禍で疲弊する地域経済を支えるためにも、再編を通じ地銀の経営強化を進めたい考えだ。
 地銀側にも再編に向けた機運が高まってきた。10月には前橋市に本店を置く東和銀行がインターネット金融大手SBIホールディングスが掲げる「地銀連合構想」への参加を表明。静岡銀行と山梨中央銀行は包括提携を発表した。
 もっとも、統合が加速するかは不透明だ。明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「水面下で統合を検討中の金融機関の背中を一押しする効果はあるかもしれない」と評価するが、福島市に本店を置く東邦銀行の佐藤稔頭取は「金利上乗せを目当てに統合することはない」と否定的。愛知銀行の伊藤行記頭取は「(再編で)銀行の数が減っていたらコロナ対応はできなかった」とも指摘する。 

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