洋上風力、事業者公募=脱炭素促進へ4区域で―政府 2020年11月12日

 政府は近く、千葉、秋田両県内の洋上風力発電「促進区域」を対象に事業者公募を始める。二酸化炭素(CO2)を排出せず、再生可能エネルギー普及の切り札と位置付けられる洋上風力だが、国内実績は乏しい。2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする菅義偉首相肝煎りの重要政策の実現に向け、技術開発や採算性を占う試金石となる。
 公募が始まるのは、千葉県銚子市沖、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、同県由利本荘市沖(2区域)の計4区域。それぞれ関連法に基づいて指定された。海外で実績があり、浅い海域で土台を海底に直接建てる「着床式」では初めてとなる。政府は近く要件などの公募指針を公表する。
 政府は7月、洋上風力の主力電源化を目指し、30年までに発電容量を原発10基分に当たる1000万キロワットとする目標を示した。発電事業にとどまらず、設備の保守管理や工事に必要な港湾整備など地域活性化に対する期待も大きい。
 公募では区域ごとに1事業者を選定し、最大30年間の占用を許可。選定から運転開始まで最長約9年半猶予されるが、「開始が早ければ評価になる」(経済産業省)といい、電力大手や総合商社、石油元売りなど少なくとも数十社が企業体をつくって応募準備を進めている。
 ただ、本格的な洋上風力は大型風車の整備や専用船、蓄電池の調達などで、数千億円の建設コストが掛かり、「長期的にきちんと採算が取れるか」(大手電力幹部)が課題だ。政府は電力の固定価格買い取り制度(FIT)を適用する構えだが、9月に試算された1キロワット時当たり29円(税抜き)案は「想定外に安い」(検討事業者)との懸念が出た。
 主力電源化に向け、技術面では電力を都市部に安定的に送る送電線整備に加え、深い海でも設置できる「浮体式」開発も課題だ。 

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日本でも事業者の公募が始まる「着床式」洋上風力発電所(写真は台湾、JERA提供)
日本でも事業者の公募が始まる「着床式」洋上風力発電所(写真は台湾、JERA提供)

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