米株上昇、増税懸念が後退=3日で840ドル高―大統領・議会選 2020年11月07日

 【ニューヨーク時事】米株式市場では、ダウ工業株30種平均が、米大統領選の投票日の翌日4日から週末6日までの3日間で約840ドル上昇した。民主党のバイデン前副大統領が共和党のトランプ大統領をリードする一方、同時実施の上院議員選は開票開始後の早い段階で共和党優勢と伝わった。政権と議会の「ねじれ」が起きれば、バイデン氏が掲げる富裕層・大企業向け増税などの実施が難しくなるとの見方から株式への買いが膨らんだ。
 政策の停滞観測が相場を押し上げる皮肉な構図だ。一方で、「ねじれ」の環境下では民主党が主張する大規模な経済対策実現へのハードルも上がる。新型コロナウイルス感染が再拡大する中、実体経済の回復ペースは鈍化。「来年に向けて米経済の回復はさらに鈍くなる」(英調査会社)との懸念が強まっている。
 株価上昇をけん引したのは、IT大手などのハイテク株や医療などのヘルスケア株だ。「ねじれ」により「新たな規制で巨大ITを縛るのが困難になる」(日系金融機関)との見方から、ハイテク株中心のナスダック総合指数は3日間で約730ポイント上がった。また、バイデン氏が訴える公的福祉拡大に関しても実現への不透明感が増し、民間のヘルスケア企業にとって追い風となった。
 投票日前、市場では大統領選と議会選に関し、ともに民主党が勝利するとの予想が大勢だった。しかし、ふたを開けてみれば共和党が健闘。米エコノミストは「民主党政権になっても、共和党に配慮した、より中道寄りの政権運営になるとの見方が、市場の安心感につながった」と指摘する。
 ただ、上院選では、与野党の勝敗が、来年1月に一部州で実施される決選投票の結果次第になる可能性が高まっている。大統領選では、劣勢のトランプ氏が法廷闘争を展開。情勢の変化が市場の波乱要因になりかねず、先行きは見通せない。 

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