生き残りへ本業縮小=需要消失、迫られる改革―日航・ANA 2020年10月30日

 日本航空とANAホールディングスは生き残りを懸けて航空事業をいったん縮小し、事業構造の抜本改革を断行する。新型コロナウイルス感染拡大で国際線を中心に需要が消失し、固定費の負担が重くのしかかっている。人件費などコスト削減を進めるとともに、資本増強を含めた財務基盤の強化を検討。非航空事業で収益を確保しつつ国内路線網や雇用の維持を目指すが、予断を許さない。
 「事業構造の見直しを通して、痛んだ財務体質を再構築する」。日航の菊山英樹専務は30日の決算発表記者会見で、こう強調した。
 コロナ禍の猛威は、2010年の経営破綻後、路線数の削減など固定費の圧縮を徹底してきた日航にも大きな打撃を与えた。21年3月期連結業績は再上場後初めて純損益が赤字に陥る見通しだ。
 日航は7~9月期に、月150億~200億円のペースで手元資金が流出。投資の抑制に加え、使用年数の長い大型機の早期退役で整備費などを約600億円以上削減する。役員報酬カットは当面継続。10月までに社員約500人を一時的に外部企業に出向させるなどして人件費を抑制する。
 これらの改革の断行はコロナ収束後を見据え路線網を維持し、専門技能を持った社員の雇用をつなぎ留める狙いがある。人件費の削減も「雇用を守ることを前提」(菊山専務)にした措置だ。
 両社は収益構造の変革を目指し、航空事業以外に力を入れる。日航はドローンによる物資配送など地域活性化事業を5年程度で1000億円の規模に育てる計画。ANAも顧客データを活用し、旅行や物販などの事業をてこ入れする。
 財務基盤の強化にも取り組む。日航は来月に融資枠1000億円を追加設定して資金繰りに万全を期すほか、資本増強も検討。ANAは一部を資本と見なせる劣後ローンで4000億円調達する。
 ただ、今年3月末時点で2774億円だった日航の有利子負債残高は、9月末には5011億円に膨らんだ。コロナ禍の長期化で需要の戻りが遅れるほど、利払い費で財務基盤はむしばまれていく。国内路線の見直しなど、さらなる改革を迫られる可能性もはらんでいる。 

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