勝者映すカトリック票=激戦州ペンシルベニア左右―米大統領選 2020年10月25日

 最終盤の米大統領選で、トランプ大統領、バイデン前副大統領の両陣営は浮動票のカトリック信徒の取り込みに注力している。カトリック票は共和、民主両党間を揺れ動くだけでなく、1970年代以降の出口調査によれば、前回を含めてほぼ全ての大統領選で勝者を支持してきた。激戦州ペンシルベニアで、選挙結果を占う「バロメーター」の動向を探った。
 ◇米国の縮図
 「全ての人への善を求める指導者をお与えください。アーメン」。15日夕、州西部ピッツバーグ中心部の広場。神への祈りから始まったのは、バイデン氏支持のカトリック信徒の集会だ。新型コロナウイルス対策で聴衆は距離を取り、マスクを着用して演説する徹底ぶり。ケネディ以来、米史上2人目のカトリック系大統領を目指すバイデン氏を後押しする。
 2016年の大統領選では、雇用回復を掲げたトランプ氏が、民主党が優勢だったこの州でクリントン元国務長官に僅差で勝利。大番狂わせの一因となった。登壇した女性は「州人口の24%はカトリックだ。われわれ次第で州の結果をひっくり返せる」と訴えた。
 主催者の大学教員ベス・ベンディティさん(64)によると、中絶反対を絶対視する保守派へは「移民問題や医療保険など共和党が語らない問題もカトリックに重要」と訴える方針。「保守派もトランプ氏が良い人間でないと気付いている」
 世論調査機関ピュー・リサーチ・センターのグレッグ・スミス調査部長補佐は、カトリック票が選挙結果を正確に反映してきたのは人種や人口構成、学歴などで多様性があり「米国の縮図だからだ」と説明する。
 ◇トランプ離れ
 ピッツバーグから車で20分。紅葉の始まった丘陵地の閑静な住宅街で夫と3人の子供と暮らすビアンカ・ラブラドールさん(36)は、コロナ禍で「巣ごもり生活」を続ける。長年共和党支持者だったが、トランプ氏の「ひどいコロナ対応」に失望。郵便投票でバイデン氏に1票を投じた。
 「コロナの危険性に関してうそをついた」「科学者に耳を傾けず、21万人以上が亡くなった」。中絶反対の立場から同じカトリックでも中絶容認のバイデン氏は「自分よりもリベラル」に映るが、トランプ氏への反感が背中を押した。
 ピューの最新全米調査では、カトリック信徒でバイデン氏の支持率が51%となり、44%のトランプ氏を逆転。カトリック票が再び選挙結果と一致するか注目される。
 ◇共和党も攻勢
 「胎児の命も大切だ」。ピッツバーグに向かう高速道路脇で、中絶反対派の存在の大きさを示す大型看板が目に飛び込んできた。共和党系のカトリック団体は9月以降、ペンシルベニアなど激戦州で970万ドル(約10億円)を投じ、中絶を容認するバイデン氏への中傷広告を展開する。
 保守派カトリックはトランプ氏の強固な支持層だ。ピッツバーグ郊外の共和党施設を訪れたサラ・ワーナーさん(80)は、中絶容認のバイデン氏は敬虔(けいけん)でなく「信仰を票取り込みの足掛かりに利用しているだけ」と主張した。
 戸別訪問で投票を呼び掛けてきた共和党地区委員会のトム・ウーベン委員長(75)は「投票率は上昇し、トランプ氏はここで7割は取れるだろう」と手応えを語る。
 ただ、ウェストチェスター大のジョン・ケネディ教授は、トランプ氏から逃げる票の方が多いと指摘し、上積みの可能性を疑問視する。州内で両候補の支持率の平均値は24日現在、約5ポイント差でトランプ氏劣勢が続く。(ピッツバーグ=米ペンシルベニア州=時事)。 

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バイデン前米副大統領を支持するカトリック信徒の集会=15日、ペンシルベニア州ピッツバーグ
バイデン前米副大統領を支持するカトリック信徒の集会=15日、ペンシルベニア州ピッツバーグ
トランプ米大統領を支持するサラ・ワーナーさん=16日、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外
トランプ米大統領を支持するサラ・ワーナーさん=16日、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外

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