「バイデン氏優勢」でも株高=追加経済対策に期待―米市場 2020年10月24日

 【ニューヨーク時事】米大統領選が目前に迫ってきた。格差是正を訴え、増税を主張する民主党候補バイデン前副大統領の優勢が伝わるが、米株価は予想に反して堅調に推移している。背景には、野党民主党が訴える大規模な追加経済対策への期待があり、「トランプ大統領勝利なら株高」との市場の見方が変わりつつある。
 23日のダウ工業株30種平均の終値は2万8335.57ドルとなった。今春、巨額の経済対策や金融緩和を支えに上昇に転じた株価は、既に新型コロナウイルス感染拡大前の水準をほぼ回復しており、10月も上昇基調を維持。安全資産とされる米国債は売られ、長期金利は0.8%台まで上がった。
 バイデン氏は、大企業に恩恵の大きいトランプ政権の大型法人税減税を批判。大企業や富裕層を対象にした増税を訴え、当初は「バイデン氏勝利なら株安」とみられていた。
 だが、足元の追加経済対策をめぐっては、民主党が2兆ドル(約210兆円)超を主張。小規模にとどめるべきだとする与党共和党との対立が続いている。市場では「民主党政権になれば、大規模対策がスムーズにまとまり、景気を押し上げる」(日系証券アナリスト)との見方が台頭し、株価を支えている。
 法人税増税に関しても「バイデン氏が訴える税率28%程度であれば、景気に大きな影響は出ない」(米ヘッジファンド運用担当者)との見方が多い。JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は格差是正や財政悪化を理由に「富裕層への増税に反対していない」と語る。
 一方、米国では、新型コロナ感染が再び拡大している。レストランの予約は減少に転じつつあり、航空需要の回復も足踏み状態。バンク・オブ・ザ・ウエストのチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「市場は民主党の政権奪還や財政出動を見込み、明るい2021年を予想しているが、悪い兆候を見過ごそうとしている」と過度な楽観論を戒めた。 

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