要件急変で農家混乱=コロナ交付金、農水省に批判 2020年10月24日

 農林水産省が、新型コロナウイルスの感染拡大で経営に打撃を受けた農家に対する交付金の支給要件を突然厳格化し、農家の間に混乱が広がっている。農水省の見通しの甘さに対する批判が高まっており、同省は各地で説明会を開くなど対応に追われている。
 要件が変更されたのは、野菜、花、果樹、茶の農家の翌シーズンの生産を支援する「高収益作物次期作支援交付金」。資材購入や機械導入に対し、10アール当たり5万円を基本に、施設栽培の花や大葉などは同80万円が支給される。当初の要件は2~4月の出荷実績だけで、コロナにより減収したかどうかは問わなかった。
 その結果、6~8月の1次公募期間の申請総額は約450億円と、242億円の予算の2倍近くに膨らんだ。リンゴなど価格が下がっていない作物や、コロナ流行前に出荷されたタマネギなど、要件から外れていないものの、コロナ禍と無縁な作物の申請が多く含まれていたという。想定を超える申請が殺到することになり、要件を急変せざるを得なかった。
 農水省は今月12日、既に申請を受け付けたものを含め、交付額を実際の減収額以下にすると変更した。コロナによる減収を証明する申告書の提出も求めた。申請通りの支給を見込んで肥料を購入するなど準備を進めていた農家は混乱。自民党農林族議員からも「農家は政府にだまされた」と非難の声が相次ぐ。
 農水省は「当初から要件を厳しくすれば農家が申請できず、営農を断念する恐れがあった。変更は申し訳ない」(生産局)と釈明する。21日には2回目の公募を開始したものの、新たな要件でも財源は不足する見通しだ。さらに、満額支給を前提に「先行投資」した農家への対応も迫られるが、いずれも解決のめどは立っていない。 

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